常人には見えない光
「さて、1年生が対策の会議に参加するようになりました。次のイベントは春の番組制作会だけど、これに関してはまだ先なのでおいおい話し合うとして」
対策委員が賑やかになった。厳密な代替わりはまだだけど、各大学の次期対策委員はもう選出されていて、その面々が会議に来るようになった。引き継ぎだとか、仕事のイメージをつけやすくするためと、単純に1・2年生の交流。
青女から選出されたのはサドニナとなっちゃん。なっちゃんは秋学期に入ってからABCに加入した子だから、インターフェイスと関わるのはこれが初めて。だからこそ逆に馴染みやすくなるように、と思って選んだ。
「わかばはどう? インターフェイスの雰囲気は掴めそうかな」
「ひいっ、あ、えっと……おいおいです」
「まあそうか」
大人の事情でDJネームをつけるのが後回しになっていたなっちゃんにも、“わかば”という可愛い名前が付いた。星ヶ丘のマリンも然りで、今年の向島は命名センスがまあまあ悪くない気がする。
前回はその大人の事情絡みで菜月先輩の話になり、菜月先輩の話になると周りが見えなくなる野坂が暴走。各大学の3年生の誰がどのように素晴らしいかをひたすら演説して会議が終わった。
「今日の議題どうする? 今日は会議って言うより1・2年の交流メインか」
「あ、あの……野坂先輩」
「どうしたわかば」
「前回は3年生の先輩のお話を聞かせてもらったんですけど、今回は2年生の先輩のお話が聞きたいです。野坂先輩は人のいいところをいっぱい知っていて素敵だなと思ったので、もっといろんな話を聞きたいです」
ナ、ナンダッテー。そう対策委員の2年生はみんな心で叫んだことだろう。野坂の暴走をここまで好意的に見られるだなんて、なっちゃんが汚れてなさ過ぎて目映い。無知って怖い。
「そーじゃん野坂、定例会の連中とかどっちにも出てない奴とか紹介してあげたらいーじゃんな」
ゴティの進言になっちゃんも目をキラキラと輝かせているし、野坂は仕方ないなと2年生について少し考え始めた。
「えっと、まず対策が世話になることも多い定例会から。定例会議長は緑ヶ丘のLっていう縦に長い奴。あんま目立たないし定例会で力を持ってるとも思えないから話は直クンを通したらいいと思う」
「初っ端からひでーな」
「次。直クンな。絶世のイケメン。エスコートされたい。見てるだけでときめくから王子様ってこういう人のことを言うんだと思う。圭斗先輩が王様で直クンが次期国王の国に生まれたかった」
「別の意味でひでーな」
ゴティの突っ込みが「ひでーな」以外のバリエーションを用意できないくらいには野坂の2年生に対する独断と偏見の入り交じる説明が酷い。定例会と、どちらにも出ていない2年生の紹介が終わる頃には私たちの語彙力が削ぎ落とされていた。
野坂の2年生紹介を一部抜粋すれば、こーたはウザドル、りっちゃんはハートフルでラブ&ピース(極悪で趣味は抹殺)、沙都子は「さとおばさんのクッキー最高」だし、ハマちゃんに関しては「マジパねえ」で終了。これで2年生の何がわかるというのだ。
「なんかさあ、知ってたけど野坂って残念すぎるよね」
「だな。やれとは言ったけどここまでとは思わなかった」
「うるさい、わかっててやらせただろお前ら」
「わかばー、こんなのでよかったー?」
「野坂先輩が皆さんと仲がいいからここまで遠慮の要らない紹介が出来るんだって感動しました…! 私も野坂先輩のようにみんなと仲良くなれるように頑張ります…!」
あ、うん。なっちゃんも大概だったわ。この親にしてこの子ありみたいなことになってるな。当の野坂は、俺がそんな風に見えるだなんて有り得ないなどと頭を抱えている。アンタも今まで先輩にそうやってきたでしょうが。
「まあ、まずは女子とかミキサーから仲良くなってみるといいかもしれない」
「えーと、1年生で女の子のミキサーって」
「私。星大のミキサー。アオって呼んで」
「アオさん。よろしくお願いします…!」
「私は野坂先輩をキューシートと勉学に対する姿勢以外はクズだと思ってるから共通の話題に出来ないと思うけど、よろしく」
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