Threatening step
「圭斗、例のメールの返信、どうした?」
「僕は正直参加を悩んでいてね」
「……だろうと思った」
3年生の先輩方が愁いを帯びた表情をされている。どうしたものか。どうやら3年生を対象にした何らかのイベントがあるらしく、それに対する出席をどうするかという相談のようだ。
「正直、年始のそんな時期によくもまあアンタらも時間を取れたなって気がするし、大体あの人たちは学祭でもシロさん以外は集合してたんだから、別にわざわざやらなくたってっていう、ね」
「2コ上主催だからめんどくさいってトコなんだろ」
「お察しの通りで」
どうされたのでしょうかと菜月先輩に伺ってみたところ、どうやらMMPの3年生以上を対象とした新年会が開催されるということらしい。どうして俺たち2年生以下がその対象に含まれていないのかと言えば、世代の問題だろう。
今回の主催はこの春に卒業された先輩方、つまり俺が1年の時の4年生の先輩だ。サークルの現役だった頃を知らない世代だから名前を言われても顔が辛うじて思い出せる程度で、ちゃんと知っているかと言えば微妙なラインだ。
その政治力でもって現在の地位にある圭斗先輩は、社交的だという印象がある。だけど新年会に対しては渋い顔のままだ。菜月先輩にそれについても聞いてみると、圭斗先輩は2コ上との相性が悪いのだと。
「三井は即参加に返事してきたらしいぞ」
「だろうね。いや、僕もシロさんやトツさんにはお会いしたいと思うけれど、女性陣はお腹いっぱいでね」
「そんなことだろうと思った。で、麻里さんは何て?」
「麻里さんはお忙しいそうで不参加だよ。僕に逃げ場は用意されていないようだし、本当に菜月さん次第ということになる」
「うちに言われても! うちだってそんなアウェーみたいなところ、お前次第で身の振り方を決めるつもりだったのに」
1年生の時の4年生と言えば、男性の先輩方は俺たち現2年生ともちょいちょい話していて、元アナ部長のシロさんこと白川さんに、元機材部長のトツさんこと十津川さんのことはちゃんと覚えている。ただ、怪しいのは女性陣だ。
女性陣はサークルを引退してからそうそう顔を出しにくることもなく、それでなくても村井サンの代はサークルだけでなくインターフェイスも転換点にあった。曰く女性陣は保守的だそうだ。
ただ、唯一の例外は現役時代には半分幽霊だった女性のアナウンサー、ヤナさんこと高柳さん。この人は村井さんと同じアパートに住んでいたという事情もあってノリで召集されることもあり、現2年は最も絡んだ先輩だろう。
菜月先輩によれば、圭斗先輩はこの保守的な女性の方々との相性がすこぶる悪いそうだ。それは現4年生も同様。現4年生と圭斗先輩の関係を考えればそうなるのもごく自然なことのような気がしないでもない。
「菜月さん、どうする。逃げるか死にに行くか」
「別にうちは誰と相性が悪いとかじゃなくて先輩ばかりの空気の中に居辛いだけで」
「それはそれで問題じゃないかい。菜月さんは可愛がられているのに」
「言うな」
「つまり、菜月さんはお守りとして野坂でも装備したらいいということだね」
「ノサカがお守り装備扱いか」
装備品扱いだとしても菜月先輩をお守りできるのであれば光栄ですが!
――ってどうしてそんなことになっているのか! そもそも俺は参加資格のない現2年であって、まだまだいたいけな19歳。そんな場に放り込まれてどうしろというのか。
ただ、後輩をしている3年生の先輩方を見られるというのはまたとない機会じゃないかと思わないこともなく。いや、頼まれても行きませんけどね! なんかそんな絶対三井先輩がめんどくさそうな現場だなんてまっぴらごめんだ!
「どうせ三井は酔ってグダるかトツさんとゲーセン三昧だろうからな」
「三井のガス抜きが成功して、平和に過ごせればいいけど」
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