ジャストミートで手が伸びる
公式学年+1年
++++
今日はちょっと微妙な天気だけど、バーベキューは少雨決行。これから佐藤ゼミの恒例イベント、全学年合同バーベキューが開催される。会場は大学から徒歩20分くらいのところにあるバーベキュー場。
4年生はさすがに参加も任意なんだけど、2・3年生は参加が義務づけられている。学年ごとに決められた予算の中から食材や飲み物なんかを買って、ここに持ち込むのだ。ちなみに2年生の幹事は鵠さんが担当している。
「鵠さん、炭に火ついたよー」
「おっ、サンキュー高木。おーし、焼くぞー!」
2年生と3年生は隣り合った場所でそれぞれバーベキューをやっている。網をぐるっと囲うように設置された木のベンチで、今か今かと肉が焼けるのを待っている間にも、3年生の方からは美味しそうな音と賑やかな声。
3年生になるとお酒が解禁される。2年生はまだダメ。正直3年生側が羨ましいですよねー。俺の視界には、缶ビールと箸を手に、今にも臨戦態勢に入りそうな果林先輩。はあ。いいなあ3年生は。早く3年生になりたい。
「そっか、3年は酒が飲めるのか」
「鵠さんは年齢的に飲めるでしょ、いいなあ」
「つっても括りは2年だし、そもそも俺酒飲めないじゃんな」
「えっ、そうなの?」
「一滴も飲めねえ。酒臭いトコも苦手だし、タバコもムリ」
「へー、意外だなあ」
健康第一、と鵠さんが俺の紙皿にキャベツともやしを乗っけてくれるけど、そうじゃない。肉を待ってたんだけどなあ。まあいいか。塩こしょうで軽く味のついた野菜炒めは前菜に。
2年生と3年生の予算は同じだけの額だ。3年生はお酒を買ってもそれなりに楽しめることを加味すると、2年生が食材に使える金額の大きさだ。クーラーバッグにはこれでもかと肉や魚介類、それと焼きそばの麺が詰め込まれている。
野菜なんかの食材は女子たちが下拵えをしてくれていて、入れ替わり立ち替わりで食べたり準備したりを繰り返している。鵠さんは幹事だからともかく、ただ座って食べてるだけの俺は野菜じゃなくて肉が食べたいと言える立場ではないのかもしれない。
「よーし、そろそろお肉を――」
「はー、疲れたしー! はいイカ! 鵠沼、これも焼いて」
「サンキュー安曇野。お前も食え。ほら、肉焼けてるぞ」
「あっ」
「あんがと。んー、肉だねやっぱ」
狙っていた肉は安曇野さんの紙皿に乗っけられてしまった。ま、まあ、安曇野さんはイカの下拵えをしてくれてたし。お疲れさまですよ、当然ですよ。仕方ない、もう一度肉を焼こう。
「よーし、イカ焼くぞー!」
「鵠沼クンホタテも来たよー」
「おっ、佐竹はホタテか! よーし焼け焼け!」
「あー……」
うーん、肉を焼くスペースがなくなっちゃった。しょうがない。次のタイミングで食べられればいいや。鉄板の上にまかれた魚介類は、鵠さんが豪快に高い位置からの塩コショウで味付けをする。
食材はまだまだ残ってるはずなんだ。2年生はお酒禁止な分、予算は食材にほぼ割り振ってある。果林先輩も「ウチの学年は例外だったけど2年生は大体余らすみたいよ」って言ってたし。まだ肉を食べるチャンスはあると信じて。
「まあ、魚介類もおいしいんだよなあ」
「高木、食ってるか」
「食べてるよ」
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