番外編 3
「テペットしようよ、ティオヴァルト」
「「は?」」
思わず2人ではもる。本日2度目だ。ティオヴァルトは呆然とした表情で、涼し気な顔をしてるツキヒを見ているが、俺もティオヴァルトと全く同じ顔をしている自信がある。
俺が知っているテペットっていうのはいわゆるテスターによる代理戦で、まかり間違ってもカードを下げていない、テイカーですらない人間に対してしかけるものではないと思っていたのだが。
呆然唖然というのにふさわしい。人間に対して何言ってんだこいつ。
「待て、言う相手間違ってんぞ」
「君でいいんだ」
「・・・俺はテスター持ってねえし、ただの人間だ」
「ソロでSランカーは人間やめてるってコカゲが言ってた。なら問題ない」
「ちょっとお前面かせよ」
「さーせんでした!」
「ティオヴァルト」この名前で気付くべきだった。迷宮踏破が高じてなったっていうSランクただ一人のソロ、ティオヴァルト。まさかここで出てくるとは思わなかった。
っていうか、そんなの連れてるあの幼女何なの? サクヤコもなにかすごい肩書とかあるわけ? こわい。
90°ぴったりに頭を素早く下げた俺に、ティオヴァルトはなんとか溜飲を下げてくれたようだった。まあ、目つきはさらに鋭くなったけどね! ちなみにツキヒの奴は<当千>を両手で持ちティオヴァルトの方に向け顔を隠していた。
耳は狐に似ていて、額には小さな角。口元にはちょろっとなびく髭に背中んは身体よりも濃い緑色の鬣。スマートな体は緑色の鱗で覆われている。そんな<当千>ものっているらしく、両の前足で両目を塞ぎ、体を震わせふさふさとした動物の尻尾を思わせる尾先まで震わせて見せているのが小憎らしかった。その<当千>の隙間からのぞいてくるツキヒはもっと小憎らしかった。
「で、テペット」
「ま、いいけど」
「いいのかよ!?」
さっきから叫びっぱなしだと思いながら声が出てしまうのは仕方がない。もはや2人はそんな俺を一瞥するだけになった。なにその冷めた反応、つらい。
それよりも人間対テスターの試合だなんて正気かと思っていると。
「殺してもいいのか」
「だめ」
「だめに決まってんだろぉぉぉぉ!?」
「ちっ」
テスターを殺そうとしていた。まあ、冒険者の気持ち的にはそうなんでしょうけれどもね!? 手塩をかけて育てたテスターが殺されるとか冗談じゃねえ! どう考えてもダメだろ! いや、そもそも冒険者とはいえテイカーじゃない人間対してしかけるのが間違っているんだけど!
頭を抱えていると、2人からは不審者を見る目で見られた。解せない。
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