新たな登場人物紹介 ティモシーならび彼の家族

●ティモシー


 本名ティモシー・ロバート・ワイズ。

 20才。190cm。

 レイナたちの前に姿を現した時の彼の風貌は、手入れもされずボサボサの黒髪、黒々とした髭は伸び放題、ガサガサに荒れた肌……とまるで世を捨てたようなものであった。

 

 約1年前に、デメトラの町にて、愛娘ビアンカを”マリア王女(この時のマリア王女は、中も外もマリア王女)”に殺された人物。

 肉体労働で生計を立て、妻と赤ん坊を養って”いた”のだろうと測できる、結構がっしりとした体つき。第4章においても、ルークとディランの頭頂部を酒瓶で打撃し、昏倒させ、出血までさせるのだから、腕力はそれ相応に強いと思われる。


 彼の顔立ち自体は、際立って美しいわけでも醜いわけでもない。左頬に逆三角形を描くように3つの黒子が並んでおり、この特徴的な黒子がなければ、彼はそれほど人に強烈な印象を残すことはなかったと思われる。

 現に約1年前の”マリア王女”による「ビアンカ殺人事件」を目撃したトレヴァーも、その特徴的な3つの黒子で彼が”あの時の父親”であると分かった。


 妻と愛娘――自身の希望でありこの世の光ともいえる彼女たちを”マリア王女”によって奪われた彼は、魔導士フランシスと魔導士サミュエルの力を借り、”レイナ”たちが泊まっている宿に忍び込み……

 全くの無実の罪でティモシーに粛清されそうになっている”レイナ”の元に、トレヴァーとアダムが駆け付けるのはあと少しでも遅かったなら、”レイナ”は間違いなく彼に殺されていたであろう。


 その後、彼はトレヴァーならびルークたちの「今のマリア王女の中にいる魂は全くの別人」というまごうことなき真実にも全く聞く耳を持たず、”レイナ”に向かって「淫売」「悪魔女」「キ××イ」「キ××イ××コ」などといった言葉を浴びせかけ、周りの者の再三の説得にも応じることなく、”レイナ”を殺そうとした。

※「キチ×イマ×コ」呼ばわりは、さすがに下品であるとフランシスも指摘していた。


 様々な邪魔が入り、”(フレディをはじめとする周りの男に守られ続けた)憎い女”を殺すことができなかった彼。そして、あろうことか、衛兵たち(彼にとっては国家権力の息がかかった者たち)までやって来て……

 娘たちの仇をとった後は最初から死ぬ気であった彼だが、”もはや、これまで”と、自身の手に握られていた酒瓶の欠片で躊躇いもなく、一直線に喉元を引き裂き自殺した。

 彼は、自分から全てを奪い、そのうえ、裁きを受けることなく守られることとなった女の青い瞳に、一生涯忘れられないような自分の死にざまを焼き付けようとしたのだ。


 ただ愛だけに生き、短くそして哀しい生涯を閉じざるを得なかったティモシー・ロバート・ワイズ。

 港町の暴動に駆け付けたカールとダリオは、彼の身元を次章でジョセフ王子に報告することになると思われる。



●ケーテ  ※すでに故人。トレヴァーの回想にのみ、登場。


 ティモシーの妻であり、ビアンカの母。

 作中において、詳細な容姿の描写はなかったが、トレヴァーの記憶のなかに残っている彼女は、折れそうなほどに細い腰つきの小柄な女性――女性というよりも少女の域を出たばかりと思われるあどけなさが残っている娘であった。


 彼女は、世にも美しい自国の王女に、愛娘ビアンカへ祝福を授けてほしいと……王女に対して非常に無礼なふるまいではあったが、進む行列を遮って馬車の中のマリア王女に直接、声をかけた。

 マリア王女は無礼を叱責するのでもなければ、無視することもなく、慈愛に満ちた天の女神のごとき笑みを、まっすぐに”ビアンカに”向けた。

 この時、ビアンカがマリア王女にとって風景の一部から自分の残虐な欲望を満たすことができる獲物に変わったことなど、誰が想像できたであろうか。


 目の前で、我が子がその小さな肉体に最大限の苦痛を与えられて絶命したのを見た彼女は、その後、精神のバランスを崩し……自殺した(死因は不明)のとのことであった。


 

●ビアンカ  ※すでに故人。トレヴァーの回想にのみ、登場。


 ティモシーとケーテの宝物である娘。

 その小さな肉体に、マリア王女によって(おそらく彼女がブレスレットに隠し持っていた毒物によって)最大限の苦痛を与えられ、まだ1才にも満たない短い生涯を閉じた。


これから愛に包まれ、すくすくと育っていくはずであったビアンカ。

 彼女を見守る父母――ティモシーとケーテの3人の清潔であり穏やかで地道な幸福は、マリア王女の手によって手折られ、踏みにじられたのだ。



※マリアがビアンカを殺した後、ジョセフが自らティモシーの家を訪れ、彼に頭を下げて謝罪し、多額の賠償金を支払ったとのことであった。

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