「泉ののろい」その12……長い長いながい!
「今はお許しを、花乙女の姫君よ」
「ボクは今度の春までしか王子の御側にあることも、仕えることもできない。せめて、今回のことは自分でも決着をみたい」
するとマグヌスはまばゆいものを見たかのように視線をそらした。
「今、私が口外するわけにはゆかないのです。どうか、お許しあれ、姫君」
「ボクは姫じゃない!」
そのときコロロと、小石がアレキサンドラの足下に転がってきた。
彼女はそれにつまづいて転んでしまったが、その小石を拾い上げると、駆けてきた少女の掌に握らせてやった。
「ありがとうおねえちゃん」
少女が見上げる、その頬に滴が滴った。
「おねえちゃん、泣いてるの? 痛かった? かなしいの? くるしいの?」
少女はアレキサンドラの膝に取りすがって泣いた。もらい泣きだ。
「平気だ。心配してくれてありがとう。でもこんなことで泣いちゃうなんて、弱虫だったね。がんばらなきゃ」
すると、幼女はこちらには思いよりもしないことを言った。
「 がんばらなくっていいんだよ、普通にできることが多くなるように、心がければいい」
「それって、お父さんか、お母さんが言ったの?」
「ううん、お父さんはねえ、いつもおしごとにおわれていて、いそがしかったの。でも、かわりの人にまかせることができない人で、がんばりすぎて死んじゃった」
「そりゃあ、かわいそうだったな、おとうさん」
思わず、茫然としてしまうリッキー。
「ううん、本当は顔もおぼえていないの。ときどき、うちはどうしてお父さんがいないんだろうって、夜中にねむれなくって、泣いちゃうけど……朝、目がさめるとスッキリしてるよ。顔はひやさなくちゃならないとしても」
女の子はふるふると首を振って、
「痛いときに、痛いよーって泣いて叫ぶと、痛みがやわらぐんだって」
「君、そんなことしたことあるの?」
驚いて訪ねると、少女は首をひねって、
「少しだけ」
と言って、アレキサンドラを仰ぎ見た。
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