　王子は樹木の隅に腰掛けようとして、アレキサンドラの叱責を受けた。

「危ない、王子」

「な、なんなのだ」

「この様は場所には毒虫などが冬眠しているかもしれないから、よく調べてから！」

「いても、べつに襲ってきはしないだろう。ほ、ほら、日光が届かないし、寒いし寒いし寒いし！　冬眠中なのだろう？　それこそ冷血動物だし」

　そう言う間に、白い子蛇がちょろりと迷いでて、迷惑そうにのろのろと安住の地を求めて身をのばしかけ、途中、ぽろっと倒木から転げた。

「かわいそうに」

　と、アレキサンドラが拾い上げ、少しばかりの餌と一緒に革袋の中に入れてやった。

「一緒に泉に行こう」

「そうか！」

　王子はぽんと手を打った。

「泉の大蛇も今は冬眠中で、楽に水をくませてくれるかも！」

　と甘いことを言う。

「そうだといいですね、王子」

　アレキサンドラの対応はことさら冷たい。

　先ほどの無礼を謝らないからだ。

　しかし王子はだれに対しても、謝ったりはしない。

　そのように育てられてしまっている。

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