「まじないの剣」の続き

 街の人が好意で持たせてくれた、水筒の煎じ茶を飲んで、心を落ち着けて、少しずつ気持ちを立て直す。


「王子、疑うわけではないのですが、本当にこの山に大蛇が出たのですか?」


「わからぬ。だが君にそれを尋ねられるのはつらい」


 このまま、あてどなく彷徨って、それで人生おしまい、ということもあるかもしれないのだ。


 そこは慎重になるしかない。


「いいえ、王子。ボ、わたくしは幼少の頃から山では遊びまわっていましたが、そのようなものはついぞ見かけませんでした」


 つまり、取ってつけたような作り話なのではないのか?


 それもひそやかにして王子の耳に入るようにしむけられた……。


「おかしい。王子、今城下はどうなっているでしょうか?」


「ううむ、どこか信用のならない宰相一人を残してくるのではなかったか……」


「それは……」


 思わず口ごもるアレキサンドラ。


 その隙を見て、王子は彼女の唇を奪った。


 傲慢なほどやさしく。


 ところが、無反応の彼女に、彼は身を離した。


 目すら開いたままの彼女に、バツが悪そうに、


「さ、さむかったのだ……」


 うなだれて、そう言い訳をした。


 だが! しかし! アレキサンドラは大蛇のことしか考えてなかった。


「それです! 王子」


 途端、彼女の勘が閃いた!


「蛇は自分で熱をつくれない。冷血動物と罵るなかれ。彼らほど陽のぬくもりを求めて生きる生き物はないのです。それが泉に出現?」


 アレキサンドラの眼光は鋭く、英知に輝いていた。


「変だとはお思いになりませんか? まるでこれみよがしに……水蛇ではないのですよね? 王子」

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