もう少し「花乙女」
リッキーは息苦しくなりながらも、木戸を開いた。
「え!?」
そこには金色の頭、一、二、三。
みんな見慣れた頭だ、四、五、六。
それに一番見慣れた黒髪一つ。
「ルイ! おまえまでなんだ!」
ルイは、配達の仕事をサボってまでそこにいる。
「おまえがさ、十六になるっていうから、どんなもんかと思ってさ。……それに、俺ら、覗きには来たけど、木戸の隙間からもまだ見てない!」
言い募る真っ赤な顔に、呆れたリッキーが、白粉の入った丸みを帯びた瓶ごと、その頭にぶちまけた。
小部屋の中と外で笑いが起こる。
リリーは心配げに言った。
「マリア、リッキーったら、お化粧まだなのに……」
「彼女なら必要ないでしょう、紅一つで」
リリーはもう一度息をのむ。
「決めた! 私、お金を貯めてリリアのお店に、通ってやるわ。あのリッキーをこんなにした、お母様のお店だもの!」
「同感よ」
マリアはリッキーを引き戻し、木戸をしめさせて、彼女の髪を編み込む手を休めずに言った。
リッキー自身はしばらく我慢していたが、
「あっ! 髪をそんなにひっぱったら、痛いよ」
「女の子はこんなこと、いつものことなの。恋の神様の護符を編み込んでるんだから、文句いわない!」
リッキーは、ほとんど母親のリリアの物言いに似たものを感じていたが、今は我慢する。
自分で髪を結ったことがないのだ、しかたがない。
「それは……ありがとう」
「どういたしまして」
マリアは真剣だ。
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