第39話 飛行試験一回目 その2

試験を行う空域へ向かいます。

「上見て」すぐ上を海自のP3Cが航過していきます。日光に照らされた白い機体は青空によく映え、無機物のくせに綺麗だなと思いました。写真に残せなかったのが残念です。試験を行う空域は大雑把にいうと山側と海側の二つがあるのですが一回目のフライトのみ山側でした。山側に近づくと日本アルプスからの風で気流が乱れているのか時々結構揺れました。


空域に到着し試験開始です。まずは検査官が手本を実施し、つぎにいよいよ自分の番です。操縦が検査官から自分に渡されます。

「ユーハブコントロール」

「アイハブコントロール」言ってみたかったんだよなあこの台詞

試験の順番はバラバラかもしれませんが当時のメモや記憶に残されてる範囲でわかる限り書いていきます。


まずは水平飛行です。水平儀が隠されているので所定の位置に基準線があるかどうかだけで機体の角度を判断します。基準線、ようは水平線のことです。これが天候次第では中々見えないです。

水平飛行から上昇に入ります。上昇時は速度110ktを維持し、エンジン出力は70PSIです。上昇中にトリムも調整します。トリムとは大雑把にいうと動翼にさらに小さい可動翼がついているのですがこれを調節して機体をまっすぐ飛ぶようにしてやることです。

ラダートリムはダイヤル、エレベータートリムは小さなハンドルのような物で調整するのですがこれが中々難しい。左横にあるのでまず見ずに大雑把に動かしてからリトリムと言ってチラ見して微調整します。基準線とトリムが重要だと自分は実感しました。まあ検査官じゃないので実際はどこに重点が置かれてるかは知りませんがね。


続いて上昇旋回に入ります。旋回は左右両方実施します。先に旋回する方向とタイミングは自分で決められます。

左右の雲や山等を目標にし、それに向かって速度を維持しつつ旋回します。

「左旋回行きます。」動作に入るときは声で検査官に伝えます。

「左旋回ロールイン」操縦桿を左に倒して20°のバンクを取ります。水平儀が使えないので事前資料の説明通り右主翼のエルロンとフラップの境目あたりに基準線が来るように傾けて所定のバンクを取ってやります。この時の確認はチラッと一回だけ見て素早く行います。ワングランスワンチェックと言うそうです。

旋回し、目標が検査官の東部あたりまで来たらバンクを戻します。

「ロールアウト」続いて検査官から指示が出ます。

「高度〇〇ftでレベルオフしよう」レベルオフ、機体を水平にするという意味です。操縦桿を前に倒し、エンジン出力を下げ、トリムを再調整します。

「エンジン〇〇PSIだよ」

「はい」出力下げるの忘れてました。あと計器を結構長く見てクロスチェックが疎かになってたような記憶があります。レベルオフしたら現在高度を読み上げます。

「レベルオフ高度〇〇ft」指示された高度より結構ずれています。

今度はまた同じように上昇し逆側へ旋回します。



続く

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