第33話 オーストラリア戦
手裏剣は露骨にずっと不機嫌そうな顔をしていた。フランはそれに気づいていたが
「オーストラリア戦はどうでしたか?」
「俺は今恐れていることがある。本田を
前に本田の最高潮は南アW杯だったという話をした。単純な話だ。本田のベストポジションはCFなんだよ。
本田はポストプレイヤーだ。しかし二列目でポストプレーをしてもさして驚異にはならない。ポストプレーというのは基本的にゴールに背を向けてするからあまり直接的に前線の選手にボールを供給しない。余り怖いプレーはしてこない。また、低い位置のポストプレーヤーに対しては強くタックルに行ける。
ポストプレーってのは基本的に前線で行うものだ。よりゴールに近い位置のポストプレイヤーに強くタックルに行くと危ない位置でのFKやPKを与える可能性が出てくる。また、そこでいいボールを落とされるとアシストになるポストにもなり、非常に脅威だ。
本田もやはり日本人だった。『パスの美学』なんて言葉を口にしていた。ゲームメーカーという言葉は日本人には特に甘美に響く。ただ、ザックJAPANでは最終的にほとんどFWのような使われ方をしていた。この辺はさすがザックといったところだろう。
オーストラリア戦、本田は素晴らしい働きを見せた。本田は後ろのDFと駆け引きしながら味方が上がってくるまで時間を作るのが非常に上手い。本田の洞察力と創造性が発揮されるところだ。ただし、単独では活きない。周囲の選手のサポートを要する。
先取点がそうだった。原口が上がってくるまでキープ。最良のタイミングでスルーパスを通している。その後、不運にも接触プレーがあって打撲。そこからは大人しくなっちまったが。
もしハリルがこれに味を占めてCFで起用し続けたら少々困ったことになりそうだ。W杯予選通過してしまう可能性が高い。選手達が岡田監督やザックの遺産を持ち出してハリルの指示とは異なるサッカーをしてやり過ごす。ハリルも続投。そうしたらJFAは反省することなく、日本は誤った方向に進もうとするかもしれない。何より惨敗するのが解っているW杯を見るなんて辛すぎる。
日本代表なんだから日本人の適性を活かしたサッカーをすべきだと俺は思う。いくらディフェンスの裏にロングボールを蹴り込んでも日本人はそこまでスピードがないんだよ。相手と競り合いぶち倒すフィジカルもない。
ハリルは日本人とアフリカ人は特徴が異なるという現実を知るべきだ。同じやり方では困る。まあ、メソッドを一つしか持たないのかもしれんが」
「敵地で勝ち点1をもぎ取ったことは評価されるべきでは?」
「オーストラリアはサウジアラビアに行って2-2と引き分けてからホームに戻ってきた。試合になってみると、疲労が抜けておらず動きはひどく鈍かった。対して日本代表は日本からオーストラリアへの移動で済んでいる。時差が少ないのは大きい。
この試合、日本は後半になってリトリートして引き分けを狙いに行った。交代して入った浅野はカウンター要員と言えるだろうが原口に代わって左
隔世の感だ。ザック政権時の映像を観るとアジア相手ならアウェーだろうと相手がどこであれ殴り合いに行っている。ハリルはしきりにザック時代より今の方が選手のレベルが落ちていることを
オーストラリアに対して完璧な守備を
そして今後の日程を見るといい。日本は中東……サウジ、UAE、イラクのアウェー戦を一試合も終えていない。この三試合はいろいろな意味で何が起こるか判らんぜ? 勝ち点1で満足して良かったかどうか。
まあ、予選落ちした方がJFAにはいい薬になると思う。ハリルを更迭したらJFAがいくら払う契約になってるのやら。選手達からハリルの不満も漏れ聞こえるし、善は急げだと思うがね」
「コーチが監督だったら日本代表をどんなフォーメーションにしますか」
「うーん……」
俺は立ち上がった。
「お前らも立て。サッカーするぞ」
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