僕らの7日間本気戦争

 僕らが幼少期から密かに通っていた場所がある。

 親は誰も知らない。いや、知られてはいけない。

 ここは僕らだけの楽園なのだから。

 普通の家の子どもは解らないだろう。家が地獄という事を。

 家庭内暴力、児童虐待、育児放棄。

 僕らは家という檻の中で、親という悪魔に飼われている。

 そんな僕らが唯一、逃げ込める場所が秘密基地だった。

 学校近くの林の奥に朽ち果てた工場跡。

 誰も使わなくなってからどれだけ経つのか知らないけど、屋根と壁があれば、十分だった。

 僕・・・カズキは同じ境遇の4人の友達、スバルとアカネ、ヨシユキ、サユリと放課後はここで遊んでいた。

 誰も家には帰りたくなかった。帰れば、地獄が待っている。

 小学校6年生になるまで、地獄は続いていた。いや、酷くなっていた。

 皆、解っている。親には逆らえない。

 そう躾られたから。

 背中の傷が痛む。

 身体が痛まない日なんて無い。

 正直な話をすれば、よく死なずに居るなと思う。

 僕らはこの秘密基地でただ、静かに過ごしたかっただけだ。

 

 「カズキ。これ何だろう?」

 ある日、僕らの秘密基地に何かが埋められた跡があるのを見付けた。

 埋めたのは最近。多分、僕らが居ない夜に誰かが埋めたんだ。

 「何だろう?掘り起こそう」

 こんな廃墟に埋めるんだ。多分、ろくでも無い物に違いない。

 「お金なら良いな。1億円あったら、何処か遠くへ逃げれるかな?」

 僕らはそんな淡い夢を抱きながら穴を掘った。

 大人の背丈ぐらいまで掘った所で袋が幾つか、出てきた。

 「これ・・・本物かな?」

 袋から出てきたのは銃だった。ガチャガチャと大小、様々な銃が出てきた。それと同時に弾丸も多く、出てきた。

 「本物じゃない?」

 サユリが興味津々で見ていた。

 「こんなん・・・売る事も出来ないし・・・困ったな」

 「元に戻す?」

 アカネが不安そうに言う。

 「いや・・・何かの時に役に立つかも知れない。雨に当たらないように隠しておこう」

 僕はそれを手放したくなかった。きっと・・・それは僕らの武器になる。そう感じたからだ。

 僕らは弱い。

 あまりに弱い。

 だから・・・銃に・・・力に・・・惹かれたのかもしれない。


 僕らは秘密基地に居る間に銃に出来る限り、触った。それはまるで玩具のように・・・。

 与えられる事の無い玩具を僕らはここで手に入れたのだ。


 ウィンチェスター社 モデル1897 ソードオフ

 ジョン・ブローニングが開発した散弾銃である。モデル1893の改良だが、多くはフレームの強化や無煙火薬に対応するなど、時代に合わせた改良である。結果として、現代に至るまで、長らく製造される銃となる。

 トレンチガンという愛称で軍や警察などにも使われ、後にハンマー内蔵型の散弾銃が現れるまでは、散弾銃の主流であった。

 軍用は着剣用のラグが装着されたり、連続射撃で銃身に熱が溜まらないように排熱用の覆いがされたモデルがあるが、一般的にはそのような装備は無い。このソードオフモデルはストックと銃身を切断して、全長を半分近くまで小さくしたモデルである。正式なモデルでは無いが、戦場などで塹壕戦での取り回しや、携帯性の良さを考えた時に生み出された。全長を抑える為にパイプ弾倉も3発にまで抑えられた。

 

 この散弾銃は大きさ、重さから言って、小柄な小学生にはピッタリなサイズだった。僕は好んで、この銃を弄った。それ以外に拳銃として、マカロフPM自動拳銃を触った。他の奴らもそれぞれに銃を弄った。それぐらいに多く、ここには銃が埋められていた。

 誰が何の為になんて、考えた事は無い。

 ただ、これが僕らにとって、心の支えになった事は間違いが無かった。

 だが、それはあくまでもその程度の事だ。これを実際に使う事など無い。僕らはそう思っていた。


 1か月後。

 サユリが学校へ来なくなった。

 僕らに連絡を取る手段は無い。何度か、彼女の家の前まで行った。

 サユリの父親はサユリに暴力を振るう。

 サユリは何度も怪我をしていた。

 だが、最近、サユリの様子は変だった。異性に対して、酷く、怯えるようになった。学校の先生にだって怯えた。

 そんな彼女が姿を現さなくなった。何かあったに違いない。

 僕らは彼女を救出しないといけないと思った。

 大人に言っても、何もして貰えない。それは当たり前だと思っていた。

 だけど、力で大人に敵わない。

 だから、僕らは鞄に銃を詰め込んだ。何かあれば、これで脅せば良い。

 脅すだけだ。

 そう言い聞かせた。

 僕ら四人は彼女の住む賃貸マンションへと向かった。

 僕の鞄には散弾銃が入っている。

 緊張しながらインターフォンを押した。

 何度も押したが誰も出なかった。

 不安が増大していく。

 僕はその不安に圧し潰されそうだった。

 咄嗟に鞄から銃を取り出す。

 「どいてろよ」

 僕はドアの周りから離れるように言った。

 ガシャン

 木製フォアハンドを軽く引く。レシーバーの後端からフォアハンドの動きに連動したスライドの一部が飛び出し、ハンマーをコッキングする。

 狙いはドアの閂がある部分。下手にドアノブなどを狙えば跳弾する危険性がある上に鍵が外れない可能性がある。そんな事を考えていた。

 初めての発砲だった。

 引き金を引いた時。激しい衝撃が銃を持つ両腕に響き渡る。

 ドンという音と共に銃口から弾き出された弾丸は扉に大きな穴を開けた。

 「あ、開いた」

 その場に居た全員が驚いていた。

 僕はすぐに扉を開き、中へと入った。賃貸マンションと言っても狭い間取りだ。すぐにサユリを見付けられると思った。

 「サユリ!」

 声を掛けても反応は無い。次々と部屋を開ける。そして、最後に風呂場の扉を開いた。そこには裸で横たわるサユリの姿があった。

 「サ、サユリ!」

 声を掛け、揺さぶるも反応は無い。冷たくなった身体。その瞳はただ、見開かれているだけだった。

 「死んでる・・・」

 多分、死んでから相当な時間が経っている。風呂場の中には酷い臭いが漂っていた。サユリの身体から発する臭いだ。

 「な、なんで」

 アカネが泣いた。それに合わせて他の奴らも泣き始めた。

 解っている。何でじゃない。サユリは実の父親に殺された。嬲り殺された。

 身体に残る痣や傷がそれを物語っている。多分、泣いていただろう瞳。

 痩せ細ったその身体は最後まで、生きる事を諦めなかったのかもしれない。

 僕はサユリの手を強く握った。

 「きゃあああ」

 突然、悲鳴が聞こえた。

 振り向くと見知らぬおばさんが驚いた声を上げていた。

 「あ、あんた達、何をやっているの?」

 おばさんは僕らを見て、そう叫んだ。

 「逃げるぞ」

 僕らはおばさんを押し退けて、その場から逃げ出した。

 「ど、どうする?」

 逃げる中でヨシユキが不安そうに尋ねる。

 「どうする?・・・そうだな。サユリの復讐でもするか」

 「サユリの親父を殺すのか?」

 「それだじゃない。大人、全員に復讐するのさ。俺らだって・・・いつ、殺されるかわからないだろ?殺される前に・・・やってやろうじゃないか?」

 僕らはそんな会話をしながら街中を疾走した。

 

 「僕らはこれから戦争をする」

 秘密基地に戻った僕は皆にそう告げた。

 「戦争・・・って」

 アカネが不安そうに呟く。

 「大人達を皆殺しにする。これは復讐だ」

 復讐という言葉に皆が反応した。

 「やろう・・・サユリの復讐・・・僕らの復讐だ」

 明日があるかどうかなんて、この場に居るみんなは考えた事など無かった。毎日の苦痛に耐えるだけの日々をただ、やり過ごしているだけだ。そんな僕らにとって、逮捕されるとかそんな話は遠い絵空事で、むしろ、目の前の悪魔に復讐する事だけが全てとなった。

 この瞬間、僕らは開戦した。

 

 サユリの両親は逮捕された。

 そして、僕らは指名手配された。それはドアが破壊され、周辺に銃弾があったからだ。当然ながら、通報したのはあのおばさんだ。近所の住人だったらしい。

 発見されたサユリの死体から、両親が容疑者として逮捕されたようだ。

 僕らの身元はすでに学校で確認されている。だから、隠れるように僕らは街中を歩き回る。

 復讐と言っても簡単では無い。

 すでに自宅は警察が張り込んでいるだろう。

 僕らの居場所はあの秘密基地しか無い。

 

 「手を挙げろ」

 僕は散弾銃を手にコンビニに商品を運ぶトラックの運転手に向けた。

 秘密基地の近くにあるコンビニの駐車場。夜にやって来たトラックを狙った。

 トラックから降りて、荷台の扉を開いた中年男性は突然、子どもが現れて、「手を挙げろ」なんて言っても本気にはしなかった。

 「邪魔だ。邪魔。遊んでいるんじゃないぞ?こっちは時間厳守なんだから」

 男は面倒臭そうに彼らを追い払おうとした。

 「やめろ。撃つぞ?」

 僕はそう声を掛けたが、彼はそれを無視して、仕事を続けようとした。

 「バカにしないでぇ」

 突然、アカネが怒鳴った。同時に銃声が聞こえる。

 彼女の手に握られたS&W M10リボルバー拳銃の銃口から煙が噴いていた。

 中年男性はトラックの荷台の前で胸を抑えながら倒れた。

 「よ、よし、奪うぞ」

 僕は咄嗟にそう指示を出した。それで彼等は慌てて、荷台へと乗り込み、ありったけの食料や飲み物を奪い、その場から逃げ出した。

 

 僕達は慌てて、秘密基地の中へと駆け込む。

 「こ、殺した」

 アカネは今になって泣き始めた。

 「バカ野郎。泣くなよ。あいつだって大人だぞ?俺らの敵だろ?」

 スバルが震えながら言う。

 「そ、そうだよ。皆、敵だ。俺らは戦うんだ」

 ヨシユキも手にしたコルトガバメント自動拳銃を振り上げながら言う。

 誰もが初めての殺人に怯えている。

 怖い。

 目の前で人が死んだ。

 殺した。

 「なぁ・・・呆気なかったな」

 僕は何気にそう言った。

 「あ・・・あぁ」「そうね」

 皆、その言葉に我に戻った感じだ。

 「でも・・・きっと、ここにも警察が来るよね?」

 アカネが不安そうに言う。

 「あぁ、そうだろうな」

 僕もそう思った。警察は必ず、ここを探りに来る。逃げ続けるなんて無理に決まっている。

 「僕らはここで戦うしかない。あいつらが僕らの言う事を聞くまで」

 それから僕らは秘密基地を要塞にするためにあれこれとやった。

 残されていた鉄板や机などで開口部を塞ぎ、彼方此方にバリケードを作った。誰も入れないようにした。そして、見張り台と称した二階部分にスコープを装着したルガー10/22ライフル銃を手にしたヨシユキを配置した。

 秘密基地の周囲には様々な罠を仕掛け、僕らは本気でここで戦争をする覚悟を決めた。

 午後8時。

 私服警察官3人と普通警察官5人がやって来た。彼らは僕らの秘密基地をライトで照らしながら確認していた。

 ヨシユキは冷静に彼らに狙いを定めている。

 ガシャ

 何かが壊れる音がした。

 「どうした?」

 刑事の1人が音のした方を見た。

 「いや、ここを踏んだら地面からガラスが割れる音がして・・・」

 警察官が驚いたように下にライトを照らし見ていた。

 「こんな場所だ。ガラス瓶でも埋めてあったんだろう」

 刑事は少しホッとした様子で答える。刹那だった。

 異臭がその場に漂う。ライトで地面を照らしていた警察官が慌てて逃げ出そうとするが、その場に倒れ込んでしまう。

 「なっ・・・何だ。この臭いは?」

 刑事達も目や喉を強く刺激する痛みを感じながらその場から逃げ出そうとする。倒れた警察官を引きずって逃げ出そうとした二人の警察官もその場に倒れ込んでしまう。

 その様子を見ていたヨシユキが唖然とする。

 「混ぜるな危険って本当にヤバいんだな」

 それを聞いたアカネが笑う。

 「だって、母さんが前にこれなら楽に死ねるって言ってたもん」

 アカネの母は精神的におかしい。それはアカネが物心つく前からだったらしい。何度も自殺未遂を重ね、アカネも心中に巻き込まれた。その中で彼女の母親がネットで調べた情報だった。

 僕らは地面の中に割れやすそうなガラス瓶を用意して、その中に混ぜてはいけない洗剤同士を入れて、蓋をしてしっかりと混ぜた物を埋めた。それはあまりに単純な罠だったが、思いの外、効果があった。

 三人の警察官が倒れたまま、彼らは撤収した。残された三人は暫く、苦しんだ後、動かなくなった。

 当然ながら、辺りはすぐに限界体勢が取られ、警察だけじゃなく、消防や救急まで駆け付けた。多分、彼らは三人の救出を試みるつもりのようだ。

 「どうする?撃つ?」

 三人を救う為防護服を着た消防隊員達が姿を現した。彼等は周囲を警戒しながら、ゆっくりと三人に近付いている。そんな様子を見ていたヨシユキが撃ちたそうにしている。

 「止めておけ。まだ、奴らにこちらの存在を気付かれるわけにはいかない」

 僕はそう言って制した。だけど、本心じゃない。本心はすでに死んでいるだろう三人の死体ぐらいは無事に回収させてやるべきだと思ったからだ。

 だが、無情にもその想いは叶えられなかった。

 消防団員の1人は担架を被害者の横に置こうとした時、何かが地面の中で割れる感じがした。あぶない。そう思った時には遅かった。地面の中に設置したガラス瓶が割れ、中に充満していたガソリンの気体とガラス瓶の上に敷かれた踏むだけで破裂する火薬玉の火花が合わさった瞬間、瓶の中のガソリンと機械オイルの液体が爆発した。地面を裂くように破裂した爆風に消防士が吹き飛ぶ。火の点いたオイルが彼の身体を覆った。

 「ぎゃああああああ」

 燃え上がる消防士を救うために他の隊員達が必死に消化を試みる。消火器が持ち込まれて、彼は泡だらけになった。すぐに彼が運び出され、順に別の三人も運び出された。

 ここに何かがある。警察は当然ながらそれを察知して、この周囲一帯を規制して、機動隊とSITを投入した。

 僕らの秘密基地は警察に取り囲まれた。外からは警察から投降を求める声が拡声器で繰り返されている。

 「奴ら・・・本気かな?」

 スバルが不安そうに言う。

 「本気だろ・・・三人、殺されたんだ」

 僕は平然とそう告げる。

 「そう・・・だよね。私たち・・・どうなるのかな?」

 アカネが誰となく質問した。

 「家に戻される。・・・その後は・・・」

 誰もが最悪を想像した。もう、後戻りなんて出来はしない。

 警察側はジュラルミン盾を構えた機動隊が列を成して、迫ってきた。彼らは慎重に地面を棒で叩きながら、罠を回避していた。

 「あいつら」

 その様子を見ていたヨシユキはコッキングハンドルを引っ張った。そして、静かに狙いを定める。相手はまだ、自分達が狙われているなんて思っていない。

 ヨシユキは一瞬、躊躇った。それは僅かな間だっただろう。指がまるで凍り付いたように動かなかった。でも、彼はそれを振り切った。指がトリガーを引き切った。

 22LR弾が発射された。小さい弾丸だ。その威力は確かに低い。だが、この100メートル以下の距離ならば、その心配は少ない。

 弾丸は機動隊員の身体に当たる。防弾チョッキを着ているとは言え、当たった衝撃はそれなりにある。小さい弾丸でも機動隊員はその場に崩れ落ちる。

 「発砲!」

 突然の事に彼らは慌てて、後退を始めた。

 これで警察はここに銃を持った者が居る事を認知した。

 

 「次は本気で来るぞ」

 僕は皆に配置に着くように指示した。

 これは戦争だ。

 皆、戦うしかないという覚悟で持ち場に散った。多分、もう生きて互いに顔を合わせる事は無い。そう思いながら。

 僕は散弾銃を構えて、相手が最初に侵入してくるだろう裏口に張り付いた。正面には多くの置ける限りのバリケードと罠を仕掛けた。あちらから入って来る事は無いだろう。あるとすれば、普通のアルミサッシの扉になっているこの裏口だ。ここにもバリケードはしているが、突破するならこちらと考えるんじゃないかと僕は思った。

 その晩、警察が動く事は無かった。

 

 翌朝、朝日が昇った。

 二日目。警察の包囲網は厚く、空にはヘリが飛んでいた。

 こちらが銃を所持していることからかなり慎重になっているようだった。

 僕はコンビニから奪ったサンドイッチを食べている。出来る限り、消費期限の短い物から食べるようにしている。食事と水は多分、一週間ぐらいは大丈夫だと思う。トイレは・・・その辺で済ませるしかない。

 いつ、警察が突入してくるか解らない。

 不意に二階から銃声が何度か聞こえた。ヨシユキが撃っている。警察が近付いたのだろう。

 ヨシユキは緊張の余り、息が急く。

 手にした銃の弾倉を取り換える。これがなかなか面倒で、すぐに交換が出来ない。

 今、交渉をしに来ただろう警察官を撃った。二枚重ねのジュラルミンの盾にヘルメットに防弾チョッキ。完全装備であった。だが、ヨシユキは冷静に狙いを定めた。ヘルメットには顔を覆う程のバイザーが装着されている。だが、それは完全に防弾では無い。そのバイザーを貫いた弾丸が彼の顔面に食い込んだ。そして、彼はその場に仰向けで倒れた。慌てて別の警察官が彼を引きずる。その彼にも銃弾が注がれた。幸いにも彼に命中した弾丸は防弾チョッキで防がれたようだった。

 「次は殺す」

 ヨシユキは別の銃を用意した。

 それは威力が大きいみたいで使うのを躊躇っていたが、さすがにそんなわけにはいかないと思ったからだ。

 300winマグナム弾を用いるボルトアクションライフル銃。主に狩猟に用いられるライフル銃だった

 

 ヨシユキの発砲で警察は混乱した。

 この事から不用意な接近は危険だと判断され、建物への接近は以後、SITが担当する事になった。

 彼らが一番の問題としているのは籠城している犯人との交渉が出来ない事だった。そして、籠城している犯人の素性も持ち得る武器についてもだ。

 だが、そこに科捜研からの情報がもたらされる。

 彼らは撃たれた警察官の防弾チョッキから弾頭を取り出し、分析したのだ。

 「22LR弾か・・・思ったよりも小口径だな」

 「トラックを襲った時に使った弾丸も38スペシャル弾ですし・・・扉を開けるのに使ったのも12番ゲージのダブルオー弾だと出てますから・・・奴の持っている銃は散弾銃と拳銃、それと22LR弾を使うライフル銃と言う事なのでは?」

 「22LR弾を使うライフル銃って競技用の銃か?」

 「どうでしょう。アメリカなんかだとプリンキング用として普及してますし」

 そんな意見が交わされる。

 相手が銃を所持している事が判明した為、周辺規制も半径が広げられ、上空を飛ぶヘリにも退避が命じられた。

 

 夕方近くになった。

 辺りは暗がりになる。

 ガチャガチャ

 金属が擦り合う音が響き渡る。

 ヨシユキは音に気付き、昼寝から目を覚ました。スコープを覗くと防弾盾を構えた隊員達が近付いて来る。金属が擦り合う音は頭を守る為にジュラルミンの盾を3枚、持ち上げているからだ。

 「懲りないな」

 ヨシユキはボルトアクションライフルのコッキングハンドルを引く。

 冷静に狙う。前に持つ防弾盾はかなり厚い。下手をするとこの弾丸でも貫通しないかもしれない。だけど、頭の上に掲げているジュラルミンの盾ならいける。

 彼はそう考えながら、銀色の盾に狙いを定めた。

 銃声が鳴り響く。盾はまるで紙のように易々と貫かれ、隊員のヘルメットさえ貫いた。その場に転がる隊員。それを見た他の隊員は驚いた。だが、その僅かな瞬間にもヨシユキはコッキングハンドルを引いた。

 凄い反動だった。

 ヨシユキは撃った瞬間、怖くなった。だけど、それ以上に興奮した。

 やれる。

 手応えがあった。

 続けた撃った。弾丸は逃げ惑う隊員の身体を貫いた。防弾チョッキなどこの弾丸の前には不要だった。

 銃声が鳴り響く。次々に倒れる隊員達。彼らは手にした銃を構える間も与えられず、銃弾に倒れいてく。

 警察にとって、これは予想外だった。相手の用いる武器は22LR弾。ジュラルミンの盾でも防げる。だから、接近して、情報を得るという強硬策が出たのだ。圧倒的に情報が少ない警察側にとっては多少の無理をしてでも早期解決に繋げるべきだという意見が多数を占めた結果の作戦だった。

 「3人が現地に倒れたままです!身動き一つしません!」

 「戻ってきた2人の内、一人が心肺停止に陥りました!」

 怒号が飛び交う。

 誰もが目の前で起きた事に恐怖と怒りを覚えた。

 殺される。その恐怖は反対に殺すという殺意を芽生えさせる。

 SITの狙撃部隊が工場を見える場所に位置どる。

 まずは情報を収集する事。それが彼らの任務だった。

 だが、それを知っていたかのように銃弾が彼らを襲った。

 幸いにも銃弾は彼らの頭上をスレスレに通り越した。

 「狙撃!」

 彼らは慌てて、その場から逃げ出す。

 工場の周囲は戦場だった。これはこれまでの日本ではあり得ない事件の様相を呈し始めていた。

 

 マスコミは四六時中騒ぎ、何とか、現場を撮影しようと死に物狂いになっていた。そうした報道の状況を僕らはラジオで聞いていた。電源が無いここでは唯一の情報源はラジオだった。

 「警察官が7人ぐらい死んだとか」

 カズキはヨシユキにそう報告をした。情報を伝えるのは彼の役目だ。工場の各地に配置された仲間は皆、孤独の中でただ、その時を待っているしか無い。

 恐怖が皆を支配していく。だが、それ以上に怒りがあった。

 「あぁ・・・そんなに殺せたんだ」

 ヨシユキはつまらなさそうに答える。

 カズキはそれを伝えるとアカネの方へと向かった。彼の位置からはヨシユキの姿は見えないが、ヨシユキは震える右手を必死に左手で摩り、納めようとしていた。


 二日目の深夜。日付が変わろうとしている時、警察は動き出した。自衛隊から借りた暗視スコープを使い、SITが再び、接近を試みたのだ。今度は前回とは正反対の裏門からだ。

 裏門からの侵入をこれまで試みなかった理由は侵入経路が狭い路地しか無いためだ。相手に丸見えな上、逃げ場所が無いので、狙撃されたら、危険過ぎると考えたからだ。

 住宅街の狭い公道から敷地となる未舗装の通路へと入る。すでに使われていない

プロパンガスのボンベが並ぶ横を盾を構えた隊員達が静かに進む。

 地面に罠が無いかを棒で突きながら進むと先頭の隊員の頭に何かが当たったのを感じ取った。

 なんだ?

 彼がそう感じた瞬間、彼の脇腹に何かが刺さった。その強い衝撃で彼は真横に吹き飛び、敷地の境界に建てられた金網フェンスに身体をぶつける。

 「おい!大丈夫か?」

 すぐに背後に居た隊員が彼を引きずりながら後退する。安全な場所でライトに照らされた隊員の脇腹にはボウガンの弓矢が刺さっていた。

 「かなり深いぞ。このまま、病院に」

 新たな罠であった。頭の位置に張られた釣り糸がボウガンのトリガーに繋がっていたのだ。

 彼方此方に罠が仕掛けられている。

 警察は迂闊に近付けない事を自覚した。


 三日目の朝が来た。

 ボウガンで射抜かれた隊員は矢先に塗られた殺鼠剤によって、病院に到着前に死亡が確認された。相手は確実に殺す事を考えている。それに戦慄した警察はSITでは対応困難として、SATの投入を決定した。

 新たな指揮態勢とSATの受け入れの為にその日は過ぎた。

 被害甚大な点と人質などの情報が無い事から、警察は十分な時間を取って、事態に当たった。無論、これは犯人側を疲弊させる事も目論見にあった。

 三日目の夜が過ぎ、朝が訪れようとしている時、SATはドローンを投入した。やはり情報収集が最も重要だったからだ。これまで犯人を刺激しないようにと投入を躊躇していたが、相手は人を殺す事を厭わない危険人物であると判断されたからだ。

 二機のドローンが工場へと近付く。

 微かな羽切音が白み始める朝に聞こえる。それは二階のヨシユキにも聞こえた。外を見ると、そこにはドローンが動き回っていた。そして、そのカメラと目が合った。

 「うわっ」

 慌ててヨシユキは手元にあったルガー10/22を手に取る。半自動銃のそれは連射する事が出来た。ヨシユキはしっかりと狙うと言うよりは数を撃つ感じにドローンに次々と弾丸を撃ち込む。しかし、人間と違って空中をフラフラと動き、的としても小さいドローンには簡単には当たらない。ドローンも慌てて、逃げ出そうとする。最後の一発でドローンのローターの一つが破壊され、地上へと墜ちて行った。

 警察ではドローンの映像に驚いていた。

 「子ども・・・子どもだよな?」

 ディスプレイに映し出されたのはまだ、幼い感じの少年だった。

 「小学生ぐらいに見えますが・・・童顔ってわけじゃないですよね?」

 誰もがあまりの事に驚いた。

 「あ、相手が小学生だとすれば・・・突入はまずくないですか?」

 「説得か?とにかく・・・上と協議しないとまずい。もしかしたら、誰かに使われているだけかもしれない。だとしても・・・この子の安全は図らないと」

 事態は更に混乱した。

 強硬に突入を主張していた者も相手に子どもが居ると解った時点で黙ってしまった。

 相手に小学生が存在する情報はSATにも伝えれた。全員に動揺が走る。もし、突入したとすれば、銃を所持した小学生と遭遇する可能性がある。その場合、どう対処して良いかは誰にも解らなかったからだ。

 

 防弾盾でしっかりと防護したSAT隊員は工場の前まで接近して、スピーカーの設置を行った。ヨシユキは彼らを狙うも頑丈そうな盾と何をしているのかを確認するあまり、撃つ事は無かった。

 設置されたスピーカーからは大音量で交渉人の声が流れ始める。それはあまりに偽善的で不愉快な内容が流れていた。やれ、子どもを解放しろとか、素直に投降したらとか。

 あまりの五月蠅さに開始5分でヨシユキはライフルでスピーカーを撃った。数発でスピーカーが破壊された。

 これについて、事態が深刻化したと考えたのは警察だった。

 

 四日目の夜が訪れる。

 警察はもう限界だった。

 一度は沈静化していた強行突入意見が再燃する。情報収集も交渉もうまくいかない以上、リスクを承知の上で突入すべきだと。

 針が頂上を超える前にSATが突入の準備を始めた。

 狙撃班は相手の狙撃を潰す為に動いていた。

 彼らは事前に工場のどこに狙撃ポイントがあるかを予測していた。

 暗視装置付き照準鏡を構えながら狙撃手がゆっくりと自らの狙撃ポイントに迫る。そこは以前、相手に狙撃された場所だ。狙撃されると言う事はこちらからも狙撃が出来るという事で再び選ばれた。

 暗視スコープの中はまるで暗闇だと思わせない程に明るく見える。僅か200メートル先に居るだろう相手の顔も。

 子ども・・・

 相手はこちらが見えないだろう。暗闇に染まった狙撃手の姿など。

 照準の中には確かに子どもが居た。彼はライフル銃を手に周囲を伺うような仕草をしている。夜に敵が来る不安と一人、戦っているのだろうか。

 出来れば、銃だけを破壊して、無力化したい。

 狙いを定める。

 ホーワM1500ボルトアクションライフルが暗闇の先の工場を狙った。

 銃声が静寂な暗闇に響き渡る。

 

 ヨシユキ?

 カズキは銃声で眠りから覚めた。

 その銃声はヨシユキが撃ったにしては遠かった。

 「ヨシユキ!」

 二階に声を掛けたが、返事は無い。

 「ヨシユキがやられた!仕掛けてくるぞ!」

 彼は工場中に聞こえるように大声で叫んだ。

 戦争が始まる。本当の戦争だ。

 カズキは手にした散弾銃を握り締め、歩き始めた


 SATは狙撃が成功した事を受けて、慎重に突入位置へと移動した。

 罠が多い。これだけ罠が多い現場は想定外だった。慎重に探りを入れながら進む。細かい穴が彼方此方に掘られ、目立たないように新聞紙みたいな物で蓋がされ、土が被せられている。暗くて、穴の奥は解らないが、何かがあるようにも見える。

 「くそっ」

 新たな穴を見付けて、隊員が毒づく。いつ、撃たれるかもしれない恐怖などが強いストレスをもたらす。

 「助けて」

 女の子の声が聞こえた。隊員達は驚きながらも冷静に正面をライトで照らす。目的である通用口の所に少女が立っていた。

 「た、助けて」

 彼女は助けを求めている。

 「ひ、人質?」

 状況が解らないまま、目の前の少女を保護しないといけないと思った隊員達は慌てて、彼女の元へと歩み寄ろうとした。刹那、工場の壁を貫いて、銃弾が彼らを襲った。工場の中からライフル弾が連射されている。僅か数秒で5人のSAT隊員が血みどろのまま、その場に倒れ込んだ。

 「に、逃げろ」

 まだ、息のある隊員が少女を見上げながらそう告げる。それを見下ろしていた少女はさっきまでの怯えた表情から一転してニヤリと笑った。

 「大人は皆・・・死ね」

 彼女は倒れた隊員の顔面を蹴り飛ばし、工場へと戻った。


 スバルはAK系自動小銃をぶっ放して笑っていた。

 アカネの合図で壁に向かって横に薙ぐように撃つだけ。それだけの事が最高に面白いと思った。彼の射撃で5人の隊員が死んだことを彼はまだ、知らない。それでもぶっ放す事が最高に面白いと感じた。

 彼にとっての初めての射撃は殺した相手を見ないものだった。アカネから5人殺したと聞いても、実感など湧かない。ただ、やったという満足感だけだ。

 

 警察は再び、尻込みした。やはり圧倒的に情報不足での突入の危険性を再認識せざる得なかった。

 「これ以上、死者は出せないぞ!」

 憤慨する幹部達。だが、それ以上に現場には怒りと恐怖が渦巻いていた。

 相手が子どもだからという意識はすでに怒りに反転している。

 「ガキだからなんだ!もう、捕まえるとかじゃない。殺せ!殺せ!」

 とても警察官の言葉とは思えない怒号が飛び交う。指揮官はそれを諫めるだけでも手一杯だった。

 

 地獄のような5日目の朝が訪れた。

 回収される手立ての無い肢体が工場裏に転がる。流れ出した血が水溜まりのように地面を黒く染める。

 カズキは二階へと上がった。そこには後頭部が吹き飛んだヨシユキの死体が転がっていた。

 「ヨシユキ・・・」

 名を呼んだだけで黙ってしまう。だが、それ以上は近付けない。そこはすでに相手の狙撃手のエリアだ。少しでも姿を見せれば、撃たれる。

 「仇は必ず取るからな」

 カズキはそのまま、下へと降りた。

 そのまま、他の仲間達の様子を伺いに向かう。

 アカネは銃と一緒にあった空き瓶に廃油を詰めていた。

 「何だそれ?」

 カズキは解らずに尋ねる。

 「火炎瓶だよ。私、力が無いから強力な銃を撃てないじゃない。だけど、これなら何とかなるって思って」

 アカネは瓶の口に布を突っ込んだ。これに火を点けて、投げ込むようだ。

 「凄そうだな」

 軽いガソリンの臭いにカズキは気持ちが悪くなりそうだった。しかし、アカネはそんな事をお構いなくな何か狂気じみた感じに一心不乱に火炎瓶を作り続けていた。

 その近くにはスバルが居る。彼は自動小銃の弾倉をガムテープで二本を一本に纏めている。皆、ヨシユキが殺された事を知っている。もう、正気じゃいられない。だから、全てを撃ち込むつもりでいる。それしか残されていないから。

 

 5日目はドローンが飛び交った。警察が情報収集に躍起になっているのだ。幾ら落とされても良い覚悟で多種多様なドローンが飛ぶ。カズキ達はそれに応戦する事は無かった。下手に顔を出せば、狙撃される事は解っていたからだ。

 そして夜がやって来た。情報収集と言っても、ドローンだけではあまり意味のある情報を得られなかった。警察としても相手の武装が強力なだけにかなりの覚悟を決めて突入する為に準備を進めていた。その為、この晩、突入作戦が結構される事は無かった。

 

 そして、6日目が訪れる。

 不思議とカズキ達に疲労感は無かった。多分、異常に興奮状態にあるのだろう。寝ているのか起きているのか解らない状態で彼らは敵を待った。

 その日は静かだった。夕方まで何事も無かった。しかし、夕闇に染まる頃、事態は急転換した。工場正面に装甲車が現れたのだ。銃器対策警備車と呼ばれるトラックのような装甲車が工場前へと入り込んだ。

 「装甲車だぁあああ!」

 カズキは二人に叫んだ。

 スバルとアカネはありったけの武器を手にして、駆けて来た。だが、その時には装甲車は工場の大扉を吹き飛ばし、中へと入り込んだ。銃眼からは短機関銃の銃口が見ている。

 「うああああああ!」

 スバルが装甲車に向けて自動小銃を発砲する。ライフル弾が車体に当たって火花を散らす。警察の装甲車は防弾仕様と言っても、本格的な装甲車では無い。どこまで耐えられるか誰にも分からなかった。

 銃眼からも発砲が始まる。スバルは放置された工作機械に身を隠しながらとにかく撃った。銃眼からの射撃は角度に限度がある為に有効な射撃を浴びせ続けられるない。だが、すぐに隊員達が扉を開き、降りようとした。

 「やああああああ!」

 アカネが死角から襲い掛かる。手にした火炎瓶が車内へと放り込まれた。

 「バカ野郎ううううう」

 隊員がアカネに銃弾を浴びせた。その瞬間、彼女が両手に持った火炎瓶が地面に落ちる。一瞬だった。装甲車の中と外で炎が噴き上がる。アカネの身体が一瞬にして黒くなり倒れると同時に隊員達も炎に巻かれた。火の手はバスを包み、更に火の手が高まる。

 「ア、アカネえぇええ!」

 スバルは炎に包まれた装甲車を撃った。泣きながら。

 だが、そこに新たな装甲車が姿を現す。しかしながら一台目が炎に包まれたのを見て、躊躇している感じだ。

 「アカネの仇だあぁああああ!」

 スバルは自動小銃を撃ちながら燃え上がるバスの横を駆け抜け、外へ飛び出した。銃弾は装甲車の窓を破り、板を貫く。車内に弾丸が飛び込み、隊員達が倒れる。彼らも銃眼からスバルを撃った。

 スバルの幼い身体に銃弾が突き刺さる。それでも彼は死に物狂いに撃ちまくる。その狂気に隊員達も相手が子どもとか考えずに必死に撃った。狙撃手も彼を狙い撃つ。その弾丸はスバルの胸を撃ち抜いた。心臓を撃ち抜かれ、激しい血を噴き出しながら彼は倒れるその瞬間、まで自動小銃を撃った。

 弾丸は偶然にも狙撃手の隣に居た観測手の額を撃ち抜いた。

 その間にも工場は火の手に覆われる。激しい炎だった。警察は周辺に燃え広がるのを恐れて、消防車を呼ぶ。だが、消防車が現場に到着するのにも周辺が混雑している為に時間が掛かった。工場に隣接するアパートなどにも燃え移っていき、現場は混乱に極まった。

 6日目の夜。消火活動には時間が掛かり、朝まで周辺は大混乱に陥った。警察側は未だに犯人について、まったく判明してないままだった。

 

 7日目の丑三つ時。

 炎はまだ上がっており、空は茜色に染まっている。消防隊は必死に消火活動に取り組んでいる。彼らを守る為に機動隊は盾を構えて、立って居る。

 「これで全て・・・終わったと思うか?」

 現場指揮官は居並ぶ幹部達に尋ねる。確実に解っていることは殺したのは三人の子どもだけだった。とても子どもとは思えない戦闘ではあったが、それは間違いがない事実だった。

 「二人の子どもは死体が・・・一人は身元が特定出来そうなので、捜査一課が全力で捜査をしています」

 「そうか」

 この事件の全容がどのように明らかにされるか。そして、本当にこれで終わったのか。何一つ、警察は主導権を得る事も出来ずに終わった。


 観測手を撃ち殺された狙撃手は警戒の為、一人で狙撃地点に居た。そこは特別に借りたアパートの一室。住人の趣味だろうか。アニメグッズが彼方此方にある。

 「嫌な・・・現場だった」

 無線で撤収が言い渡された。彼は疲れたように銃を置く。

 扉が開かれた。誰が来たのだろうか。不意にそちらを見ると少年が立っていた。

 「誰だ?」

 彼は少年にそう声を掛けた。

 「あんたが・・・ヨシユキを殺したんだな?」

 少年はそう返事した。

 「ヨシユキ?」

 少年の返事の意味が解らなかった。だが、次の瞬間、彼の顔面は吹き飛んだ。

 少年。カズキは腰だめに構えた散弾銃をぶっ放した。8発の弾丸が狙撃手の顔面を穴だらけにしたのだ。

 「待ってろ。俺も行く」

 カズキは手にした散弾銃のフォアハンドを引っ張り、空ケースを宙に飛ばした。

 

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