〇チガイの唄

 殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい犯したい犯したい犯したい犯したい犯したい犯したい犯したい犯したい犯したい犯したい犯したい犯したい犯したい犯したい犯したい犯したい犯したい犯したい犯したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい壊したい盗みたい盗みたい盗みたい盗みたい盗みたい盗みたい盗みたい盗みたい盗みたい盗みたい盗みたい盗みたい盗みたい盗みたい盗みたい盗みたい盗みたい盗みたい盗みたい

 頭の中をグルグル回る。それがスベテ悪い事。だが、俺には悪い事に思えない。出来ないのは力が無いからだ。心の奥底から込み上げる俺の欲求に応えてやれないのは、ただただ、俺に力が無いからだ。俺は心の中に渦巻くスベテの欲求を叶えてやりたい

 俺はやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたいやりたい

 言葉は乱雑に全てを狂わせる。卑しい感情は俺を染め上げている。何がよくて何が悪くて、そんな尺度は俺にはない。俺がやりたいことが正しくて、それを律するなんて、くだらない世迷言。

 怠惰で、無為な時間だけが流れている。俺は闇に潜んでいた。

 雨戸を閉めた古びた家の窓から太陽光が差し込んだことはこの数年・・・無い。糞婆はただ、飯を運ぶだけの道具に成り下がって、どれぐらい経っただろうか。それで良かった。すべてはそれでよかった。誰にも干渉されない時間。それは俺の中に眠る獣が育つには十分な時間だった。

 この世の中はとても便利だ。ネットで注文すれば、何でも手に入る。最初はナイフだった。人を殺すには武器が要る。素手で殺すのはかなり難しい事だと悟ったからだ。人を殴って殺すには格闘家並に体を鍛えないと無理だ。そんな事が出来るぐらいなら、家の中に引き籠ったりしない。そこで、俺は比較的簡単で合法的なナイフに目を付けた。すでに5本のナイフが部屋にはある。軍隊で使うゴツいナイフも手に入れた。猟師が山で使う山刀と呼ばれる鉈のようなナイフも手に入れた。だが、それらを握っても人が殺せるイメージが湧かない。

 もっと強い武器が欲しい。

 自分を奮い立たせるような強い武器。誰もがそれを見ただけで怯えて、俺の前で跪くような奴だ。俺は夢想する。俺の持つ力の前で屈服していく奴等の事を。俺がかつて、そうされたように。俺は奴等になるんだ。力だ。力が欲しい。

 その中で行き着いた答えは銃だった。銃さえ持てば大丈夫だ。しかし、日本で合法的に銃が持てるのは自衛官や警察官などの公僕。または狩猟や競技を目的として許可を受けた者だ。どちらも自分からすればまどろっこしいとしか言いようが無い。そんな面倒な手順など踏んでいられるか。今だ。今、欲しいんだ。

 ネットで検索していくも、拳銃を手に入れる方法は見つからない。簡単にネットで手に入るよ。なんて言っていた奴も居るが、そんな簡単じゃねぇよ。確かに幾つか怪しいのはあったが、俺が欲しいの改造拳銃とかそんなチャチなのじゃない。しっかりとした本物だ。どうしたら手に入る。ヤクザに直接交渉をしないとダメか。いや、あいつらは狡猾だ。騙されるのがオチだろう。警察官を襲って・・・そもそも力で勝てる気がしない。どうしたら、拳銃が手に入る?

 幾らネットが発達した現在でも簡単に拳銃が手に入るわけじゃない。当然と言えば当然だ。今じゃ、警察だってネットを警戒している。昔とは違う。余程、慣れた人間じゃないとそこには到達しないだろう。或いは騙されるのを覚悟で怪しい物を買うかだ。このジリジリとする時間は幾日にも及び。俺の渇望は限界を越えそうだった。まるで水を断たれた牛のように、痩せ細った腕を振り上げ、声にならない悲鳴を上げた。奥底に眠る欲求は暴れ出す。

 殺したい犯したい壊したい殺したい犯したい壊したい殺したい犯したい壊したい殺したい犯したい壊したい殺したい犯したい壊したい殺したい犯したい壊したい殺したい犯したい壊したい殺したい犯したい壊したい殺したい犯したい壊したい殺したい犯したい壊したい殺したい犯したい壊したい殺したい犯したい壊したい殺したい犯したい壊したい

 あぁ、どれだけ望んでも叶えられぬのなら、いっそ、死んでしまうか。ナイフを一本、手に取る。レザーの鞘から抜くと刃がギラリと鈍く光る。その刃を左手首に当てる。薄い刃は剃刀のように手首の皮膚を切り裂いた。痛いとは思わない。たが、流れ出る血が赤く、温かい。

 血だ。

 真っ赤に流れ出す血を見て、僕は恍惚となる。僕は血が見たくて、体中にナイフで傷を付けた。真っ赤な鮮血が流れ出し、皮膚を伝い、床に溜る。

血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血 血・・・・・・・・・・・・・

 僕は気を失った。多分、このまま、死ぬのだろう。人を殺すという野望を叶えずして、自らの快楽に浸り、恍惚のまま、死ぬのだ。この真っ赤な血に自らの身体を沈めたまま、ただ、死ぬのだ。そうして、そっと目を閉じた。

 次に目を開いた時、眩しい蛍光灯の灯りが見えた。あまりの眩しさに目を細める。近くで女の声が聞こえた。誰かを呼んでいるようだ。とても煩い。少しは黙れ。僕は不満を覚えながら、まだ、動かぬ体に戸惑いを感じた。ここは死後の世界じゃないのか?体中に痛みが走る。その痛みはあまりに鋭く、悶絶しそうだ。一体、何が起きているのか。不安だ。孤独に慣れた身ながら、この不安には勝てない。必死に周囲を見ようとする。すると一人の男が僕の傍に立った。彼はペンライトで僕の瞳を見る。

 「ふむ。ちゃんと意識を取り戻したようだな」

 そう言うと傍に立っていた女が「良かったですね」とか言ってきた。あまりに偽善的で僕は反吐が出ると思ったが、何も言えないまま、彼らはどこかへ消えてしまった。数分後、代わりに親がやって来た。糞婆と見たくもない親父だ。親父は相変わらずしかめっ面をしてやがる。こいつにとって、僕は厄介者でしかない。自分は一流大学を出たエリートであり、一流企業の部長で活躍している身分だ。そんな奴からすれば、出来の良い兄と比べても僕は厄介者だ。

 二人から小言のようなことを散々言われた。だが、その多くは聞いていない。彼らの言葉は数年前からの俺の耳には入ってこない。無駄な言葉など、ただの雑音でしかない。電波だと思えば、気も楽になる。入院生活は1週間程度続いた。出血量が多かったが、傷はそれほどじゃなかったので、もう退院となる。この入院生活の間、俺はただ、無気力に、ただ、人形のように振る舞った。糞みたいな現実、偽善に満ちた人々。偉そうな医者。そのスベテから自己を守るためにだ。

 親の車に乗って、家に戻る・・・はずだった。しかし、連れて来られたのは家では無い。何でも俺みたいな引き籠りを立ち直らせるための団体らしい。そこが持っている共同生活施設に俺は入れられるみたいだ。

 「やめろ!」

 俺は叫んだ。そして抵抗した。だが、親や施設の職員は強引に俺を施設に叩き込む。自由は奪われる。何の権限があって、こいつらは俺から自由を奪う?分からない。ニタニタとして笑顔で奴等は俺に寄って来る。何を考えているか分からない。ただ、よく分からない事を俺に何度も何度も告げて来る。立ち直れるとか、やれるとか。嘘だ。嘘だ。嘘だ。こいつらは何を言っているんだ。俺をどうしようとするんだ。俺はこいつらの電波に汚染されようとしているのか。俺の脳は改造されてしまうのか。怖い。怖い。怖い。怖い。

 あぁ、怖い。

 自我が崩壊する。それは己の死だ。殺されるんだ。俺はこいつらに殺されて、蘇らせされる。まったく知らない自分にと。あぁ、やだ。やだ。やだ。俺を殺さないでくれ。殺さないでくれ。頼むから殺さないでくれ。俺はとにかく暴れた。だが、屈強な職員がそんな俺を羽交い絞めにする。

 こうして、俺は朽ちていくのだろうか。俺の自我は朽ちて、新たな自分が・・・

 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す

 俺は殺すと決めた。ここには自分の部屋は無い。雑魚寝のように他の利用者と共に寝る。それを職員が監視をしている。だが、夜は一人だ。俺は眠らずに起き上がる。

 「どうしたんですか?」

 不寝番の彼は笑顔で呼び掛ける。だが、俺は手にしたフォークを掲げて、彼に飛び掛る。安全の為にだろうか。プラスチックのナイフとフォークしか渡されないが、プラスチックでもフォークで人を刺す事は出来る。問題は何処を刺すかだけだ。プラスチックのフォークの歯でもしっかり刺さる弱い場所。それは目だ。俺は躊躇せずに男の左目をフォークで刺した。男は悲鳴を上げる。他の入居者達もその悲鳴で起きた。だが、俺は気にせずに今度は右目を貫いた。勢い良く振り下ろされるフォークは男の顔面を穴だらけにする。

 きゃああああああ!

 微かな灯りの中で行われる残虐な行為に入居者達から悲鳴が上がる。あまりの恐ろしさに彼らは硬直したまま、何も出来ない。そうだろう。奴等は腰抜けだ。何も自ら選ぶことの出来ない輩だ。この状況で彼らに出来ることは、ただ、俺の行為を見ているだけだ。俺は男が動かなくなるまで、刺し続けた。ふと、気付くと、フォークは柄の根本で折れて、その折れた部分で刺していた。

 「は・・・ははははは」

 俺は不思議と笑みが零れる。久しぶりに笑えた。俺は人を殺した。あんだけ殺したかった人を殺した。その光景を見ていた入居者達は怯えているだけだった。俺は彼等を見下すように一瞥してから、動かない男のポケットから鍵を取り出し、施設から脱出した。俺はとにかく夜の街を走った。だが、すぐに事件は明るみになるだろう。そうすれば、俺はお尋ね者だ。すぐに捕まるはずだった。

 橋桁の下で疲れ切った身体を休ませる。このままじゃ、ダメだ。ただ、犯罪者になるだけだ。俺はそんな事を望んでいるんじゃない。もっと、もっと、やりたい放題をしたいんだ。俺を開放してくれ。頼むから。

 俺は泣きながら、夜の街を徘徊する。まるで漂うように。ただ、歩き続けた。サイレンの音が聞こえると、俺は逃げ出した。とにかく、捕まりたくない。その一心で。繁華街の裏手へとやって来ると、そこで数人の男達が集まっているのが目に入る。どうでもイイことだったので、何気なく過ぎて行こうとすると。

 「てめぇ、何者だ?」

 突然、一人のチンピラが俺の胸倉を掴んだ。その声に気付いたのか集まっていた男達も寄って来た。皆、ろくでなしの顔つきをしている。

 「なんじゃ、そいつは?」

 「いや、突然、現れたもんですかっ」

 最初に胸倉を掴んでいたチンピラが殴り飛ばされた。

 「お前は何のための見張りだ?くそぉが」

 殴り飛ばされたチンピラはすんません、すんませんと謝っている。

 「坊主、悪いな。今のは見んかった事にしてくれよ」

 男はそう言って、他の奴らを集めて、その場を後にしてく。殴り飛ばされたチンピラも俺を一瞥してから、慌てて去っていく男達の後を追った。

 俺はその場にヘタリ込む。何がどうなっているのか。多分、彼らは暴力団か何かで、何かの取引をしていたのだろう。偶然、その場に、居合わせてしまった。それだけの事だろう。俺は完全に奴らの迫力に負けた。すべては非力なせいだ。なぜ、俺がここまで叩きのめされないといけないんだ。悔しく悔して堪らない。ふと、手に何かが当たる。触ると金属の質感。何かと思って、それを拾い上げた。


 54式手槍

 

 中国でトカレフTT-33自動拳銃をノックダウン生産した物である。ほぼ、トカレフと同一ではあるが、弾の初速はオリジナルより高く、貫通力は増している。クロムメッキされたモデルとそうでないモデルがあるが、彼が手にしたのは黒く、素っ気ないモデルだ。

 拳銃だ。

 それが何という拳銃かなんて、よく分からない。正直、どうやって撃つのかもあまり詳しくは分からない。だが、映画やアニメでは最初にスライドを引いて、引金を引けば撃てるはずだ。突然、手にした凶器。俺はそれをズボンのベルトに突っ込み、服で隠すようにして、逃げ出した。

 再び、逃げる。とにかく逃げるしか無かった。さっきの奴等が銃を失くした事に気付けば、追い掛けて来るに違いない。少しでもあそこから遠くに逃げないといけなかった。必死に走る。どれだけ必死に走っただろう。疲れて、公園のベンチにへたり込んだ。元々、引き籠りだ。体力なんてありゃしない。ただ、ひたすらに疲れただけだった。

 俺は再び、腹にある拳銃に触れた。肌に密着していたので、温かくなった金属。その質感に冷たさを感じる。何処までも冷酷な何かだ。それに触れた瞬間、己の中の野獣が目を覚ます気がした。俺は強い。そう何処からか囁かれる。俺はニヤニヤとしている自分に気付く。あれだけ息を切らせていたのに、何事も無かったように俺はただ、不気味に笑っている。ふと、公園を横切る若い女が目に映る。彼女はこちらを見る事なく、家路に急いでいるのだろう。早足で去って行く。俺はベンチからすくりと立ち上がり、彼女の後を追った。

 彼女の家は公園からほど近いアパート。少しボロい感じのアパートの二階だ。階段を上がり、彼女は家の鍵を開こうとバッグの中に手を突っ込む。刹那、後頭部にゴツリと堅い何かが当たった。一瞬で、何者かが後ろに立っていると判った。叫ぼう。そう思った時、カチャリと嫌な金属音がした。

 「おい、叫ぶと撃つぞ」

 振り返った彼女が見たのは拳銃の銃口。そして、少年だ。少年の瞳はギラギラしていて、獲物を狙う獣に思えた。それでも彼女は叫ばないと。そう思った瞬間、少年は拳銃の銃把の底で彼女の右頬を殴った。あまりの衝撃に女はその場に倒れる。

 痛い。

 あまりに痛い一撃。そして、再び銃口が向けられる。この恐怖から、彼女は完全に支配されてしまった。

 「扉を開けろ。不用意な事をしたら殺す」

 冷酷な命令が与えられる。彼女はゆっくりとバッグから鍵を取り出す。そして、扉が開かれた。女を突き飛ばすように中に入れた俺はすぐに扉を閉めて鍵を掛けた。女は転がりながらも奥へと逃げるように動いている。

 「おい、下手な事をするなよ。殺さないように撃つなんて、俺には解らねぇからよ。一発で殺しちまうぜ?」

 ニヤニヤしながら銃口を彼女に向ける。灯りを点けると女の姿がはっきりする。野暮ったい感じのどこかの事務職っぽい感じの女だ。美人とは言い難いが、まぁ、それなりに普通の感じの顔だ。女の顔は恐怖で歪んでいる。悲鳴を上げたいのを何とか押し殺している感じだ。

 俺は左手で女のシャツを破る。女は「きゃ」と短い悲鳴を上げた。その瞬間、俺は女の顔を銃把の底で殴る。あまりに強烈な一撃に女はまた「きゃ」と短い悲鳴を上げた。俺は何度も女の顔を殴る。女は悲鳴を上げないようになった。女の顔から血が流れるのは無視して、俺は露になった胸を凝視する。グラビアアイドルに比べたら物足りないが色白の乳房が白いブラジャーに覆われて露になっていた。更にブラをずらすと淡いピンクの乳首も露になる。俺は白い乳房を鷲掴みにして、ただ、揉みしだいた。

 女はただ、シクシクと泣いているだけだ。俺は乳房を暴力的に揉み、噛むように乳首を吸った。そして、左手はさらにスカートを捲し上げ、パンティーストッキングとパンツを荒々しく引き下げる。女は一瞬、抵抗する素振りをしたが、すぐに諦めて両手はグっと握りこぶしを作るだけだった。

 「おい、股開けよ」

 俺は立ち上がり、女に自分で、股を開かせた。銃口を向けられた女は戸惑いながらも股を開き、性器を露出させる。

 「おい、しっかり開けよ」

 女はその言葉の意味をただ、股をもっと開けと認識したようで、さらに股を大きく開く。

 「馬鹿か。マ●コを開くんだよ。中まで見えるようによ」

 卑猥な単語で指示されて、女は恥ずかしさで死にそうな思いをしながら性器を自分で開いた。

 「へへへ。おい、お前、処女か?」

 下衆い笑いをしながら、女に尋ねる。女はコクリと頷いた。

 「嘘つくんじゃねぇ!今時、その歳で処女なんているわけねぇだろ!ぶっ殺すぞ」

 俺は女の性器に蹴りを入れた。あまりの痛さに女は悲鳴を上げた。その瞬間、俺の怒りは頂点に達して、女の腹を踏むように何度も足蹴にする。踏まれるたびに女は「ぎょ」とか「ぎゃ」とかって悲鳴を上げた。どれだけ蹴っただろうか。女は声を発しなくなった。死んだかと思ったが、息はしているようなので、生きていることが分かった。

 「ちっ、ヤル前に死ぬんじゃねぇよ」

 俺は安心して、ズボンを降ろした。粗末なイチモツが姿を現す。他人のイチモツと比べたが事の無いので、知っているのはエロビデオの男優ぐらいだから、イチモツの大きさにコンプレックスを抱いていた。だが、それを見るはずの女は気絶をしている。それは幸いな事だった。女の両足を両脇に抱えて、俺は彼女の性器にイチモツをツッコむ。最初は先っぽがうまく入らず、コツコツと当たるだけだったが、俺は左手で場所を確認しながら、何とか突っ込んだ。気絶しているとは言え、キツい感触にこれまで味わった事の無い刺激を感じつつ、俺は腰を前に前にと出した。そして何度か腰を前後に振ったところで、俺は中で出してしまった。出した瞬間はあまりに気持ちよくて、頭がジーンとしたほどだ。

 「くそっ、凄いぜ」

 俺はそのまま、硬いままのイチモツを何度も中で擦る。3発目を出したところで、女が気付いた。

 きゃあああ!

 女は股間の違和感と目の前の俺に驚いたようで、悲鳴を上げた。俺は興奮の真っただ中で悲鳴を上げられたので、気が動転して、右手に持った拳銃の銃把で女をただ、ひたすら殴った。殴りながら、腰は前後に動いている。殴るたびに締まりが良くなり、俺は快楽だけを追い求めた。出し終えた後、女を見ると、顔が無残なほどに腫れあがり、とても人間とは思えない感じだった。そして、彼女は息をしていない。胸に手を当てるが、心臓の鼓動も感じない。どうやら、死んだようだ。

 「へっ・・・ヤラれながら死にやがった」

 俺はイチモツを抜く。彼女の性器からは白い精液と共に血が流れ落ちた。

 「マジで・・・処女かよ?」

 俺はそれに興奮した。すでに死んでいる女の股間をマジマジと見て、イチモツはガチガチに硬くなる。俺は再び、女の身体に圧し掛かる。すでに力を失った肉体はどんな形にでもなる。俺はただひたすらに死体を弄んだ。それは翌朝まで続いた。体に付いた血などをシャワーで洗い流し、ヤリまくった死体を見た。それは赤く腫れあがった気持ちの悪い何かでしかなかった。

 「けっ・・・気持ち悪い」

 そう言い残して、俺は扉に鍵を掛けて、外に出た。多分、今頃は警察が俺を探し回っているだろう。だが、俺は不思議と捕まる気がしなかった。女と犯ったからか?いや、殺ったからだろうか。高揚感から、鼻歌混じりで堂々と道を歩いている。朝っぱらから鼻歌混じりで若い奴が歩いているのが気に入らないのか、婆さんがギロリと睨んで来る。

 「おい!クソババァ。殺すぞ!」

 そう怒鳴ってやると慌てて逃げて行きやがった。最初からやる気が無いなら睨んでくるなって事だ。俺はただ、歩き、そして、腹が減った。考えてみれば、一晩中、ヤってたからなぁ。腹も空くわなぁと思い、周りを見渡す。コンビニなどもあるが、金は無い。こんな事ならあの女のサイフをパクっておけば良かった。そう思いながら見ていると、ベランダで洗濯物を干す女が目に映る。

 「なるほど。俺も初めては済ましたからな。ちょっとベテランに行っても良いかな?」

 そのまま、その家のチャイムを鳴らす。インターフォンから返答があった。「宅配便です」そう答えるだけで終わりだ。相手は扉を開く。その瞬間、足を扉に入れて、拳銃を差し込む。

 「おい、死にたく無かったら開けろ」

 それで終わりだ。女は恐怖に怯えた表情で扉を開ける。素早く、中に押し入り、女を突き飛ばす。玄関先に倒れた女に2、3発、蹴りを入れた。

 「止めて!お、お腹に赤ちゃんが!」

 そう叫ぶように確かに女の腹は膨らんでいた。俺は無言でその腹を蹴る。女は必死に腹を守るように両手で抱える。その間に俺は彼女の両足を持ち上げ、露わになった下半身を覆うデカパンを引き下ろした。さっきの女とは違い、グロめの性器を見て、不思議と更なる興奮が湧く。

 「やめてぇええええ!」

 女は必死にに叫ぶ。さすがに戸建ての家でもこれでは近所に聞こえる。

 「うるせぇええええ!腹のガキ、ぶっ殺すぞ!」

 俺は彼女の腹に銃口を向けた。それを見た女は恐怖で固まり、ただ、目を閉じた。俺は前戯も無しに指にツバを付けて、彼女の性器を少し擦った程度で挿入した。奥はまったく濡れていない。だが、その摩擦感がより興奮を与える。激しい腰付に彼女はただ、痛みに堪えるしか無かった。そして、あまりに一方的な性行為は長くは続かない。荒々しく女の大きくなった乳房を揉みしだきながら、俺は勝手に彼女の中で果てた。

 彼女は微動だにしない。また、死んだのかと思ったが、どうやら全てが終わるのをじっと堪えているようだ。俺は一発出しただけで満足した。

 「おい、良かったぜ。ガキが腹に居るとは思えねぇな。いや、それがたまらないのかねぇ」

 そう声を掛けたがシカトされた。だから、俺はその腹に銃口を向けた。その大きな腹のせいで、下半身側から銃口を向けられているなんて分からないだろう。俺は撃鉄を起こして、引金を引いた。

 カチリ。

 撃鉄は落ちたが発射はしない。当然だろう。初弾が薬室に装填されていないからだ。俺はそんな事にも気付かなかった。少し戸惑いながらもスライドをガチャリと引く。思ったよりも重くは無い。その音に女は気付いて、慌てて上半身を起こした。

 「い、いや、止めて・・・やりたかったから、幾らでもやらせてあげる。お金もあげる。だから・・・」

 一発の銃声が彼女の言葉を消した。1メートルも無い距離で放たれた弾丸は彼女の胸を貫き、背中から飛び出した。その衝撃で、彼女は再び、倒れる。トカレフの弾丸はあまり変形をしない。故に高い貫通力を維持することが出来る。その為、彼女を貫通した傷もそれほどは大きくなっていない。だが、それは肺や動脈を破ったのだろう。おびただしい血液が床に流れ始めた。彼女はまだ、意識があるのか、右手を天井に伸ばし、声にならない呻きを上げた。

 「すげぇ、反動だな。肩が壊れるかと思ったぜ」

 女のそんな姿など気にせずに俺は初めて撃った拳銃に酔いしれた。使い方は何とか分かった。ただ、安全装置が無い。このままでは危なくて持っていられない。普通ならば、撃鉄を親指で押さえながら引金を引いて、静かに撃鉄を下ろすというやり方もあるが、それでも慣れていないと危険である。そもそもそんな知識の無い俺は弾倉を抜いて、スライドを引っ張り、弾を全て、拳銃から排除した。その上で、薬室から取り除いた弾を弾倉に装填してから、弾倉を銃にブチ込んだ。

 目の前の女はパタリと天井に伸ばした腕を床に落とし、動かなくなった。死んだのだろうか?腹ボテの体を見た俺はその大きくなっていた腹に酷く嫌悪した。ここで生命が育まれる。それはまるでクソのような感じに思えた。台所へと駆け込み、彼女が愛用していただろう包丁を手に取る。そして、再び死体の前にやってきた。死体は尿を垂らし、臭かった。

 うあああああああ!

 俺は怒りとも悲しみとも知れぬ怒声を上げて、その腹に包丁を何度も刺した。血だらけになった服を捨て、シャワーを浴びた。そして、彼女の旦那のらしき服を着た。少し、大きいが気にすることは無い。台所にあったインスタントの食料で腹を満たし、俺はこの家を後にした。

 何とも言えない高揚感。何かを初めて達成した喜び。俺は満足してしまった。だが、この程度で満足して良いのかという囁きが聞こえる。そうだ。この程度で満足していてはこれまでの俺の鬱屈とした日々は何だったんだ。もっと、もっと、強く激しい快感が欲しいのだ。

 俺は拳銃だけでは力不足だと思った。銃は弾が尽きればただの金属の塊でしか無い。ならば、やはり刃物は必要だ。俺は街の中にあるホームセンターに入った。目当ての物は鉈。鉈はその重さで叩き切る道具だ。ナイフなどと違い、切る事に特化した刃物と言える。鈍器のような重さを持った刃身は例え切れなくても相手に強い衝撃を与える。ナイフも確かに殺傷力はあるが、かなりの技量で無いと、簡単には相手を傷付ける事は難しい。むしろ、鉈や手斧の方が素人には容易に振り回すことが出来て、相手に打撃を与える可能性が高い。鉈を買って、俺はある場所に向かった。

 保育園

 当初は学校とかも考えたが、さすがにそれなりに成長した数百人の生徒や教師を一人で相手するとなれば、反撃される可能性が高い。だが、相手が園児と保育士なら、問題は無いだろう。そう考えた。それにあの騒がしい子ども達が殺される様を絶望的に親や大人達が見ているかと思うとゾクゾクする。

 俺はかつて、俺が通った民間保育園に向かった。当然ながら、門は締まっている。最近の保育園は不審者などをすぐに察知するために監視カメラなどが設置されている。だから、俺は通用口からインターフォンを押した。

 「どちら様でしょうか?」

 「あのぉ。子どもの父親なんですが・・・子どもの事で相談があって来ました」

 「はぁ・・・お子様のお名前をお聞かせ願えますか?」

 思ったよりもガードが堅い。俺は諦めて、正門へと回った。そして、自分の胸辺りまである鋼鉄製の門を這い上がり、超えた。だが、その様子は監視カメラにバッチリと捉えられ、すぐに警報が鳴る。多分、じきに警備会社や警察も来るだろう。俺は右手に拳銃、左手に鉈を持って、駆け出した。

 保育士達は警報に従って、園児達を連れて運動場に逃げ出していた。多分、火災の避難なのだろう。俺は都合が良いと思った。

 「動くなぁ!」

 拳銃の銃口を彼等に向けて、俺は叫ぶ。何事かとその場に居る者達は呆然と俺を見ているだけだ。

 「この不審者!みんな、逃げるのよ!」

 初老の女性が叫ぶ。多分、ここの園長だろう。俺は逃がすまいと駆け出した。だが、園長は俺の前に仁王立ちして、行かせないつもりだ。

 「ここから先は行かせないわよ!」

 何とも勇ましい事だ。俺は左手の鉈を高らかと上げて、一気に振り下ろした。力任せに降ろされた鉈の刃は園長の額を深く刺し込まれた。園長は驚いたような表情のまま、俺を睨み付ける。多分、本当に振り下ろされるなんて思っていなかったのかも知れない。彼女の気持ちはどうだか知らないが、俺は園長の体を突き飛ばして、逃げる園児に襲い掛かる。若い保育士が必死に園児を抱えて、逃げる。その背中に鉈の一撃を与えた。刃は深く刺さり、保育士は倒れた。抱えられていた園児二人も投げ出されて、わんわんと泣いている。俺は拳銃のスライドを引っ張った。

 ガシャリ

 鈍い音と共に、拳銃は撃てるようになった。

 「逃げるな小僧ども!」

 俺は逃げる園児達に向けて発砲した。二人の園児がその場に倒れる。保育士が彼等を助けようとする。俺はその身体に狙いを定めた。再び銃声が鳴り響き、保育士が仰向けに倒れた。俺は背中に鉈が刺さったままの保育士に近付く。

 「てめぇ、手間取らせやがって、立てや!」

 保育士は息絶え絶えながらも何とか立った。わんわん泣いている園児二人も銃口に脅されて、立ち上がる。その三人を連れて、保育園の一室に籠る。その間にも保育園の周囲には幾つもサイレンが鳴り響いた。

 背中を刺された保育士は息も絶え絶えながら、二人の園児を庇うようにしている。俺は彼女達に銃口を向けながら、警察が集まってくるのを待った。

 「へへへ。いいぞ。いいぞ。どんどん、警察が集まってくる」

 人の注目を集めていると思うと、気持ちが昂る。

 「も、もう、やめて。この子達を助けてください」

 俺は保育士の顔を蹴った。園児達は泣き止まない。背中から多量の血を流す保育士の服を破るように剥ぎ、素っ裸にしてやった。外では警察が拡声器で何かを言ってやがる。俺はそいつらに向かって、素っ裸にした保育士を晒してやった。警察官の多くが余りのことに動揺しているのが顔を見ればわかる。俺は愉快な気持ちになる。

 一人の園児が走り出した。恐怖で耐えきれなくなったのだろう。俺は迷わず、そいつの後頭部に一発くれてやった。弾丸は頭を貫き、鼻から飛び出て、床を穿った。園児は転がる。グッタリと動かないまま、血を流し始めた。

 「あぁああああああ」

 保育士はその光景に狂ったように叫ぶ。俺は何発か殴ってから、股間の興奮しきったイチモツを保育士の中に押し込んでやった。何度も激しく、激しく腰を振る。その様子を警察官達は絶望的な眼で見ているしかない。もう一人の園児はただ、泣き叫び、小便を漏らしている。

 狂宴はどれだけ続いたのだろうか。女の絶望的な悲鳴とあえぎ声、幼児の泣き叫び、警察官達の絶望的な無力感。それら全ては俺の為にある。俺は最高の時を迎え、女の中で出した。あまりに気持ちが良かった。だから、目の前にある後頭部に銃口を押し当てる。サイコーの快楽を求めて。

 カチリ

 撃鉄は落ちた。だが、弾が発射されない。まだ、弾はあったはずだ。何故だ?俺は突然の事で、何が起きたかわからない。簡単に言えばミスファイア。不発だ。品質が劣化した弾丸の中にはそういう弾もある。密輸される中国製やロシア製の弾丸を使う事が多いトカレフ系の弾丸は保存状態なども最悪な事が多く、不発弾の率は高い。不発があれば、即座にスライドを引いて、それを除去する事が必要なのだが、それを俺は知らない。そして、銃口を保育士の頭から上げてしまった。

 バシャ

 まるでバケツから水が零れたような音がした。その瞬間、俺の視界が歪む。俺は警察が用意していた狙撃手に撃たれたのだ。精緻な射撃によって、眉間が貫かれた。警察の狙撃手は本来、逮捕が目的なので、射殺は避ける。だが、今回はそうじゃなかった。決して、狙撃手個人の感情では無いが、その弾には気持ちが入っていたようにも思う。

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