第20話
「まあ、その話は今はいい
それに初期の『海兵隊訓練プログラム』を受けつつ、糞まじめに授業なんて
受けていたら、 俺達のような存在は生まれなかったろう」
中年男性が苦笑いを浮かべつつ呟く
「確かにな
初期頃の『海兵隊訓練プログラム』で、少なくとも日本国民は世界が
地獄に変わっていくことを肌で実感したからな」
マクミラン TAC-50の整備をしていた男性も同意するように呟く
「当時、鬼獣による『日本国内大侵』を想定し、『国土強靱化基本計画』を
立案した政治家が、まさかの国防軍創設の立役者になるとは誰も
想像しなかっただろうな・・・
『大侵略』直後、立て続けに憲法9条や法律の改正と自衛隊の国防軍への改変が
行われたのは驚いた」
AK47ストックを握りしめていた男性が、口を挟む様に呟く
その表情はどこか懐かしんでいるように見え、またどこか
寂しげにも聞こえる
「あと国内で銃火器類販売の規制撤廃並び銃刀法の大幅改正は、かなり早かったな
確か当時の与党の議員が、鬼獣との交戦により自衛官や警察官、消防士や
救急隊員などの 緊急出動の際に、現場までの移動手段と装備が足りず、多くの死傷者が
出た事をきっかけに法改正を提案したんだったか?」
中年男性が、どこか感慨深げに呟く
「確か『海兵隊訓練プログラム』は日本国内の鬼獣との闘いや
アジア各戦線に於ける人員損耗率を鑑みて、導入したのよね?」
若い女性がどこか呆れ果てた表情で呟く
「眉唾だが本当は『徴兵制度』を復活するための布石だったとも
言われているが、まあ真相は闇の中だ
今の『海兵隊訓練プログラム』はどんな感じなのかは詳しくは知らないが、
初期は俺達が経験した学業の傍らに6ヶ月間の訓練だった
日本国内の最激戦地域の各学校の『海兵隊訓練プログラム』はたった
六週間から十八週間の短期訓練を経て即実戦に投入だったらしい
学生でそれだと、そこの地域住民はわずか三週間程度の期間で、当時の『大侵攻』
最前線に送り出されたらしいぞ」
マクミラン TAC-50を整備していた男性が、肩をすくめて呟いた
「・・・それと『大侵略』後には、日本が『核武装』――
そろそろ交戦地点へ急ぎましょ!!」
若い女性が何かを言いかけるが、コンビニ方向からの
激しくなってきている銃声を聞くと、颯爽と駆け出す
中年男性は、ため息をつくと、渋々といった表情で彼女の後を追う
マクミラン TAC-50を整備していた男性とAK47ストックを握りしめていた
男性も2人に続いていく
周囲の人々も罵りつつも手に持つ銃器を構えて駆け出した
そんな中、一人だけその場に立ち止まっているのは『彼』だけだ
ベンチに腰を下ろしながら、先ほどの会話について考える
あの女性は何を言おうとしていたのか? 考えれば考えるほど、
謎は深まるばかりだ
「(――――とりあえず整理してみよう)」
そう思い、思考を巡らせていく
①この『世界線』は、自分自身が生活していた『世界線』ではない
自分の名前や姿は、『転移』前と変わらない
何かしらの原因で『異なる世界線』へ飛ばされた
②転移先の『世界線』では、『鬼獣』と呼称されている未確認生物と
人類が闘ってる
姿形は、どうみても『ゼノモーブ』にしか見えない
③人類が『鬼獣』と呼称される未確認生物と初めて遭遇したのは、
『1947年7月8日 合衆国ニューメキシコ州ロズウェル』と
この『世界線』で言われている。
元いた『世界線』で言われていたUFOの残骸などでは断じてない様だ
④この『世界線』では『鬼獣』との小規模交戦を意図的に隠蔽するため、
『UFO』事件や『UMA』として情報操作が行われていた
つまり元の『世界線』にもある『UFO』事件や『UMA』とは全く異なる
⑤この『世界線』の西側諸国と東側諸国との『冷戦』は、『鬼獣』に対する
有効的な戦略や兵器の開発競争を隠蔽するために 行われていた可能性がある
⑥この『世界線』の70年代に吹き荒れたテロ、日本国内での安保闘争や
学生運動などは、『誰か』が複数の『正しい情報』を
密かに流したために起こったもの
⑦1948年頃より1950年代前半にかけて行われた『赤狩り』は、
この『世界線』では『鬼獣』の存在を世間に『公表』しようとした
西側諸国全体の政府関係者や軍関係者、『鬼獣』の存在を偶然に知った
ハリウッド芸能関係者や作家の阻止するために行われた
社会的抹殺や行方不明になっている関係者もいるらしい・・・
⑧『鬼獣』による地球規模の大侵略は、奇しくもこの『世界線』では
『ノストラダムスの大予言』が的中し、『1999年7月』に発生した
⑨この『世界線』の日本は、『鬼獣』による日本国内『大侵略』を
『国土強靱化基本計画』立案していた政治家により、『大侵略』直後自衛隊の
『国防軍』への改変
憲法9条や銃刀法の大幅改正、銃火器類販売の規制撤廃が行われた
⑩この『世界線』の日本には、『鬼獣』との闘いによる人員損耗率を鑑みて、
『海兵隊訓練プログラム』というものが導入されており、小中高男女関係なく
海兵隊訓練プログラム』が『義務教育』化と定められている
高校以上から『レンジャー課程教育』が必修化しており、大学進学までには
『空挺レンジャー資格』が取得できるようになっている
⑪日本国内では『三回』も地域限定で戦術核が使用されたらしい
⑫日本全国都道府県には『戦術核』が配置されているらしく、総合的な判断で
この『世界線』の日本は、『核武装』している様だ
落ち着いて整理してみた結果――――『彼』は頭を抱えるしかなかった
どこから突っ込めばいいのかわからないのだ
「(――これは一体どういう事なんだ? この『世界線』は想像している以上に
ヤバいのかもしれない)」
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