2014/9/29 Mon. - 2

 銀色に光輝く空間だった。

 周囲のポリゴンの雲も、もう見えない。


 まばゆい光の中、銀路は遊ちゃんと向かい合っている。


「これで泣いても笑っても残機はゼロじゃが、追加のコインは用意するかの?」


 思わせぶりに尋ねると、口をパクパクさせる。明かな挑発だ。


「しない。俺が目指すのは、いつだってワンコインクリアだからな」


 自身を奮い立たせるために、意図的に気取って答える。


「愚問じゃったの。では、記憶パワーアップを失っての戻り復活じゃ。準備はいいかの?」

「勿論だ。試行錯誤は充分。戦略も立てた。後は、リミットまでに戦術を磨くだけだ」


 銀路は拳を握り、己がモットーを言葉にして決意を込める。


「頼もしいの。ならば、存分に挑むがよい。主が望む、ゲームの未来のために」

「そうだな。古き良きゲームの未来のために……」


 諧謔を交え、そう、表現する。


 古き良きゲームの未来。


 今の銀路にとっては、それこそが望むゲームの未来だ。


 芝居がかった楽しげな遊ちゃんの声を最後に、銀路の意識はスーッと闇に堕ちていった。


GINJI ZAPPED TO...

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る