10 江戸の町1 江戸の歴史と範囲

『大江戸ごみ事情』を語る前に、町人の暮らし向きなど『江戸』のイロハについて触れてみたい。


【江戸の町】

よく『大江戸八百八町』と江戸の町の広さを慣用句的に使うが、実際の広さ、町の数はいかほどだったのだろうか?


私の手元に、明治28年(1895年)に刊行された「大日本管轄分地図」の東京府図がある。裏面を見ると、『東京』について説明された案内ともいうべきものがある。

以下は、その説明の引用である。


諸氏よ余は諸氏と共に此東京府下を巡らんとす 此東京府は武蔵国の中一市九郡と伊豆七島及び小笠原島を管する府庁にして此武蔵野国は上古は无斜志(むさし)といひしが奈良の朝の頃国名を二文字に更めらるに至って今の如く武蔵と改まりし・・・

諸氏よ此管内の位置は何処にありや諸氏は定めて知るならむ、東海道の東部に在りて西北は同国なる埼玉県に接し東は下総に界し、東南は東京湾に臨み西南は同国なる神奈川県下の地及び相模に連なり、西は甲斐に隣れり


東京市は麹町、神田、日本橋、京橋、芝、麻布、赤坂、四谷、牛込、小石川、本郷、下谷、浅草、本所、深川の一五区に分てり偖又此全管内町数十四、村数百六十四、戸数凡四十二万四千五百四十四、人口百七十八万三千八十五、

と述べられている。


江戸の第一歩が歴史に記されたのは、長禄元年(1457年)に大田道灌が江戸城を築いたことに始まる。

道灌の「わが庵は松原つづき生み近く富士の高ねをのきばにぞみる」という歌からもわかるように、ひなびた田舎で、今の日比谷公園辺りまで海辺であった。

その後天正18年(1590年)徳川家康が江戸に入り、慶長8年(1603年)征夷大将軍に任ぜられ江戸に幕府が開かれて、発展が始まったのである。


とまぁここら辺のことは歴史の教科書にでている。それでは、東京に人が住みついたのはいつなのか?

調べてみると、人類の生活の舞台となったのは、石器時代にさかのぼることが出来る。

1951年(昭和26年)に板橋区茂呂町の道路工事現場から黒曜石製の石器が出土した。従来縄文土器が発見される地層よりも古い関東ローム層から発見されたもので、紀元前9000年以前の石器時代に、人類が生活していたことが判明した。

また、縄文時代の遺跡は、東京全域にわたって1000箇所以上在るといわれている。


徳川家康の江戸入城から江戸の町は発展を始め、慶長から寛永年間(1600年前後)には300町、二里四方まで発展した。


その後、海洲部の埋め立て、本所・深川の開発、溜池、小日向の低湿地の埋め立てなどにより江戸の町は発展を続ける。


現代の東京につながる江戸の町の原型が出来たのは、17世紀も後半の延宝年間のことである。

この頃になると、江戸の町は674町と家康の頃のほぼ倍の数となり、広さも四里四方といわれるようになった。


その後も発展を続け18世紀も半ばの延享年間には1678町となり、実に808町の倍を越えるまでに発展した。


それでは行政区画としての江戸の町の範囲はどうなっていたのだろうか。

江戸の町の範囲は様々な考え方があり、幕府の統一見解が出されるのは、19世紀の幕末近くまで待たなければならない。


統一見解が出されるまでは、

 1.町奉行の支配地

 2.寺社勧化場 (寺社が寄付を募ることを許された地域)

 3.江戸払い御構場所 (江戸払いの刑を受けたものが立ち入ってはいけない地域・・・千住・板橋・品川・内藤新宿)

 4.札懸場の対象範囲

と、幕府の行政系統によって異なっていた。


1818年(文政元年)に幕府は、絵図に朱線を引いて、江戸御府内を確定した。

その範囲は、

 東・・・中川まで

 西・・・神田上水まで

 南・・・南品川町を含む目黒川辺りまで

 北・・・荒川、石神井川下流まで

とされていて、これは寺社勧化場、札懸場とほぼ一致する。


現代の行政区でいうと

 千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区、文京区、台東区、墨田区、江東区、豊島区、荒川区、北区の一部、板橋区の一部、品川区の一部、目黒区の一部

となる。

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