ユーグレナ・グリーン 〜ユーグレナ・グリーン〜
街に出ると10人が10人、すれ違いざまに私の事をジッと見る。
アイドルという仕事をさせてもらっているのだからそのような事が起こっても不思議ではないし、もっと見てもらい私というアイドルを知ってもらいたいと常々思っているけれど、指を差されるのは未だに慣れない。
「ねぇ、お母さん。あのお姉ちゃんおめめの色が違うよ」
マスクをしている所為で見てくれと言わんばかりに強調されてしまっている私の瞳を指差して小さな女の子は純粋な疑問を述べた。
「こら!」
「お姉さん、どうしておめめの色が違うの? 魔法使いさんなの?」
お母さんの怒る声を完全に聞き流した女の子は私の赤と桃、左右で異なる色の瞳をジッと見つめていた。
「魔法使いではないかな。お姉さんは魔法をかけてもらっている方だから」
「いいなぁ」
「す、すいません。うちの子が大変失礼なことを」
女の子のお母さんは私の瞳の色の事よりも魔法使いの存在に興味が移行した女の子の頭を無理矢理下げさせ、自身も私の瞳を見て驚きながらも深々と頭を下げた。
「頭を上げてください。私は全然気にしていないので」
私は女の子のお母さんにそう言い、今度はしゃがみこんで女の子と視線を合わせた。
「きっといつか君にも魔法をかけてくれる魔法使いさんが来てくれるよ」
根拠は全くなかったけれど、私は女の子の頭を優しく撫でながら言った。
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