鳥葉野操馬 〜トリハノソウマ〜

 幼いころから身についてしまっている癖というのはどうにもこうにも改善出来ない。


 自分の両親を幼いころからパパ、ママと呼んでいる人はよっぽどのことがない限りは心身ともに成長をしてもパパ、ママ呼びは改まる事は無いだろう。


 僕にとってのそれが『僕』という一人称だ。


 今更変えたいとは思わないが、アイドルという仕事をしていると僕の荒々しい口調に対してこの一人称が違和感を与えていると言われることが多々ある。


 僕自身はこの一人称でこの口調を使うことは昔から日常的な事だから違和感を与えているとは全く思わないのだが、そう言われ始めた頃は少なからず改善しようとした。


 結果は言うまでもない。


 改善の仕方を思い悩んでいた時に八代プロデューサーが僕にこう言ってきた。


「自分の個性を失わせるような改善は誰も喜ばないよ」


 そう言われて僕は初めてこの一人称とこの口調が生み出す違和感が僕の個性なのだと知った。


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