手羽信彦 〜テバノブヒコ〜



4月5日


「お疲れ様で~す」


「信彦さん、お疲れ様」


 仕事を終えてプロジェクトルームへ戻ってきた手羽信彦さんは近くに置いてあったキャスター付きの椅子に腰を掛けると、思い切り床を蹴って僕の机の前まで移動してきた。


「どうしたの?」


「プロデューサーさん、游に何かしたでしょ?」


 游さんに何かをしたと言われて思い当たる出来事と言えば昨日の素っ気ない態度が記憶に新しかった。


「昨日は少し忙しくて、游さんのわがままに付き合ってあげられなかったからじゃないかと思うけれど。もしかして怒っていた?」


「怒っている、のかどうなのかはわからないけど、俺に八つ当たりしてきたのは確かだよ」


「ごめん、迷惑をかけたね」


「慣れているから問題ないけどね」


 信彦さんは椅子をくるくると回転させ、笑いながらそう言った。

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