手探游 〜テサグリユウ〜

4月4日


「おぉい、プロデューサー」


「何? どうかしたの?」


 細くすらりと伸びた脚を組み、ソファーに寝転がってファンの女子中高生からイケメンボイスと言われている声と同じものだとはとても思えない苛立った声で叫ぶ手探游さんに僕は嫌々返事をした。


「飲み物ぉ!」


「今は忙しいから自分で持って来て」


「プロデューサーでマネージャーだろ? 良いから早く持って来いよぉ!」


 仕事はしっかりとしてくれるのだが、僕や仲の良いアイドルと2人きりになった時に限って口が悪くなる游さんにため息を吐きながら、僕はゆっくりと立ち上がった。


「プロデューサー?」


 プロジェクトルームを出て行こうとすると游さんが起き上がって僕をぎろりと睨みつけていた。


「おい、冷蔵庫はそっちじゃねぇぞ」


「わかっているよ。僕は次の仕事に向かわなくちゃいけないからお留守番よろしくね」


 プロジェクトルームを出ようとした瞬間、游さんが珍しく寂しそうな顔をしているのが僕の目に映った。

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