柿本文太 〜カキモトブンタ〜
3月14日
いつからだったかホワイトデーと呼ばれるようになったこの日は、僕にとって普段の仕事よりも体力を使う一日となっていた。
「プロデューサーさん、何をしているのですか?」
前々から今日のためにと用意していた手作りのフォーチュンクッキーの入った小箱を一時的に普段は使っていない長机に並べて全担当アイドルの本日のスケジュールを確認しながら振り分けをしていると半年前に姫路プロジェクトに所属した柿本文太さんが声を掛けて来た。
「文太さん、おはよう。確か文太さんに渡すものはこの辺りに……。あった」
僕は並べた小箱の中から十数分前の記憶を頼りに文太さんに渡す小箱を見つけて、その小箱を文太さんに手渡した。
「これは?」
「いきなり渡されても文太さんは初めてだからわからないよね。7、8年位前からホワイトデーは毎年、僕からいつもお世話になっている人たちへその日の内にメッセージ入りのフォーチュンクッキーを渡しているんだ」
「それが、この小箱の中に入っているんですね? ありがとうございます。でも、今お返しできるものが無いので、あとで必ずお返しを渡しますね」
「嬉しいけど、そこまでしてくれなくてもいいよ。これはあくまでも僕の自己満足でしていることだから」
そう言ったのだが、文太さんはレッスンが終わるとわざわざデパートに行ってそれなりに高価なチョコレートをお返しとして購入し、今日中に全アイドルに小箱を渡すべく走り回っていた僕の居場所を先輩アイドルたちの証言から突き止めて直接そのお返しを渡してくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます