植田結 〜ウエダユイ〜
3月9日
「ライブがやりたい!」
「ビックリした。急にどうしたの?」
何の前触れも無しに己の欲望を叫び出した植田結さんに僕はそう返した。
「俺達来月から高2だぜ。なのに、部活としてバンドを組んで、事務所が正式なユニットとしてデビューさせて、シングルとアルバムを発売しただけってありえないだろ」
「僕としてはユニット結成から3ヶ月の間に5枚のシングルと1枚のアルバムを出していることだけでも十分あり得ないことだと思うけど」
「だから、ライブがやりたい!」
僕が話し終えるまでの時間を与えてくれたのにもかかわらず、結さんは僕の話しには一切食いついてこなかった。
「折角ならライブハウスでやりたい!」
人の話しはシカトしていた癖に自分の主張は聞いてもらいたいようなので、僕はちょっとした意地悪としてこのような提案をした。
「やっても良いよ。ただし、僕は最低限の口出しと手伝いしかしない。その条件で良いならライブハウスでもドームでも好きな所で単独ライブをやるといいよ」
そうは言っても、まだ世間的な認知度の低いアイドルたちが組んだバンドグループであることを考えるとドームでの単独ライブが無謀であるのは結さんでもわかることだった。
「言ったな、プロデューサー」
「バンドメンバーとはよく話し合って企画して」
「よっしゃ!」
結さんは両手でガッツポーズをして身体全体で喜びを表現していた。その姿を見た僕は、手元にある明石和智くんの企画書をより良いものに仕上げてこのセルフプロデュース企画を和水プロダクションで今年最大の企画にしてみせると心に誓った。
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