廻紅葉 〜マワリモミジ〜
2月10日
珍しく休みをもらい、仕事を休むことが出来なかった美咲の代わりに花火の学校の授業参観に行った僕はその帰りに花火と学校近くのファミリーレストランに立ち寄った。
「お父さん、なんで来たの!」
「仕事でもプライベートでも見せない学校での花火の顔が見たかったから」
花火に怒られて、僕が言い訳をしていると1人のお客さんが店に入ってきた。
「ん?」
「あっ」
僕がそのお客さんに気付き、お手本のような二度見をすると相手もこちらに気付いた。
「紅葉お姉さんだ」
花火が日ごろのレッスンの賜物でよく通るようになったその声でそう言った事で、個人的にこの店にやって来たのだと思われる廻紅葉さんは僕と花火の連れだと思われたようで紅葉さんは僕と花火の座っている席に案内されてきてしまった。
「ごめんなさい。家族団らん中にお邪魔しちゃって」
「花火は僕と2人でいるよりも楽しそうだから気にしないで」
「そう、ですか」
「紅葉お姉さ~ん」
人目のある所であっても関係なく紅葉さんに抱き付いている僕の娘は語彙力が著しく低下していた。
「紅葉さん、僕たちと一緒だからと遠慮はしないで注文していいからね」
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて」
紅葉さんは店員を呼ぶと、メニューを一切見ずに
「白ワインを」
と、二十歳になってから半年ほどしかたっていないのにもかかわらず慣れた口調でそう注文した。
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