工藤葉月 〜クドウハヅキ〜

1月13日


「今日も寒いね」


 学校帰りに事務所にやって来た工藤葉月ちゃんはクリスマス前に僕がプロジェクトルームに用意したコタツに滑り込むようにして入り、外の冷気で冷たくなってしまった両手を温めながらそう言った。


「温かいお茶でも淹れようか?」


「大丈夫。さっき自動販売機で温かい飲み物買って来たから」


 葉月ちゃんは冷たい手と共にコタツの中に入れていた温かいレモンティーが入ったペットボトルを取り出した。


「プロデューサー」


「はい、貸して」


 小さな時にペットボトルのキャップを開けられなかった葉月ちゃんは毎回、僕に開けるようにお願いしていたのだが、自力でペットボトルのキャップを開けることが出来るようになった今でも時折このように僕にねだってくることが少なくなかった。


「はい、開いたよ」


「ありがと~」


 頼まれた以上断ることが出来ない僕はねだってくるたびにこのようにして葉月ちゃん専用のペットボトルのキャップを開ける機械になってあげていた。

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