茅野空清 〜チノクウセイ〜

「マカミア、何をしているんだ?」


 プロジェクトルームを訪れた俺はルームに入るなり、とても53枚で構成されているとは思えないというより明らかに53枚以上で構成された巨大なトランプタワーが目に入った。


「しー」


 そのタワーを建設したと思われるマカミアこと真上・アンジェリーノはトランプタワー建設の片手間にスマートフォンの音楽ゲームをプレイしながら俺に静かにするように息だけで伝えて来た。


「ハ~イ、ゲ~ムクリ~ア」


 マカミアはそう言うとスマートフォンを放り投げた。


「あっ!」


 俺が気付いた時にはもう遅く、放り投げられたスマートフォンはトランプタワーに向けて一直線に飛んでいた。


「ワ~オ」


 他人事のようにそう叫んで目を両手で隠したマカミアに何と言葉をかけてやるべきか悩みつつスマートフォンに視線を戻すと、マカミアのスマートフォンはトランプタワーの隙間をギリギリ通過して、俺の手の中に収まった。


「サップラ~イズ」


 スマートフォンからマカミアの声でそう言われ、マカミアを見るとマカミアは建設途中のトランプタワーを上段から迅速かつ丁寧にタワーを崩すことなくただのトランプへと戻していた。


 本当に何をしたいのか分からない人だ。

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