香沢拓海 〜カオリザワタクミ〜
「はぁ」
事務所1階にある喫茶店の窓際で沈んでいく夕日を見ていた僕は自然に大きな溜息を吐いていた。
「どったの?」
1人の時間を過ごしている僕の意識に当たり前のように、しかし自然に入ってきたのはまっかんこと真上・アンジェリーノだった。
「まっかんか」
「そんな悩み、わたしに比べたらちっぽけだよ」
「まっかん、僕はまだ何も言っていない」
「私なんて、小さい頃から実家の和食小料理店を継ぐために板前修業をしていたのに今はアイドルなんてやって。実家はお兄ちゃんが継いでくれたけどうちは本当にこの道を選んでよかったのかな?」
「まっかん、その悩みは僕の悩みだけど。あと、まっかんは一般家庭の1人娘じゃなかったかな? それに1人称もぶれぶれだし」
「やっぱりミーは」
「もう1人称を変えるネタはやらなくていいから」
そうツッコんでいる内に僕の悩みはまっかんが最初に言っていたようにちっぽけな悩みに思えてきた。
「まぁ、今の悩みは僕の悩みじゃないけど~」
「知っていたよ。さっきも言ったけどその悩みは僕のだからね」
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