希望沢哲 〜キボウサワテツ〜


 この日、希望沢哲は人生最大の大失態を犯してしまった。


「嘘、だろ?」


 そう言って目覚まし時計代わりに使っている携帯電話の画面を確認すると何度見ても時刻は午前9時30分を示していた。


 それを見た哲の顔は血の気が引き真っ白になっていた。それもそのはずで、休日ならまだしも今日は平日。それに加えて今日は学校を特別欠席して午前8時30分から仕事の予定が入っていた。


「ま、まずはプロデューサーに連絡だよな」


 自分を落ち着かせるために声に出してそう言った哲が一人暮らしをするにあたり仕事用として親から普段使っている携帯電話とは別に与えられた携帯電話を確認するとプロデューサーである川野流から10分おきに着信があった。


 それを見て自分の失態の重さに改めて気づいた哲は気分を落としながらも大急ぎで流に電話を掛けた。


「もしもし、希望沢ですが」


「哲か? 今どこにいる」


「すいません! 今起きた所で、まだ家に」


 流はいつもと違い妙に焦ったような口調で電話に出たが、哲の居場所を聞くと一度大きな溜息を吐いていつもの口調に戻して言った。


「今から迎えに行く。現場に着いたら2人で謝るぞ」


 大急ぎで迎えに着た流と現場に2時間遅れて到着した哲は流と共に関係者に謝罪をしたが、哲の日頃の行いと誠心誠意の謝罪によって強く咎められることは無かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る