尾上劉 〜オカミリュウ〜

「全く、何故僕がこんな事を」


尾上劉は1枚の紙と向かい合い誰にも聞こえないほど小さな声で呟いた。


「審判者の視線を感じる……この場の人間と歩む道が異なる僕には酷な試練だとでも思っているのだろうね。でも、僕を甘く見ないでもらおうか!」


心の中でそう叫んだ劉は紙にどの世界でも決して習うことのない不可解な数式を書き連ね、たった1つの答えを導き出した。


「驚いているようだ。でもこの程度動作もない」


劉は同じようにして答えを導き出しては彼が審判者と称する者に余裕の笑みを見せ、全ての問いを解いた。


「まぁ、僕の手にかかればこんな所かな」


数学のテストが終わると劉は自分よりも年下でありながら高校3年生の勉強を劉の脳内に広がる世界観に合わせて教えてくれた御雛祝音にメールを送った。


「我に新たな能力を与えし『全能の歌姫』に感謝する」


祝音の指導により劉が高校生になってから初めて学年1位となりいつものキャラクターを忘れるほど大喜びすることになるのはそれから1週間後の話である。

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