水無月夏帆 〜ミナヅキカホ〜
その日、水無月夏帆は同じクラスで同じグループで活動する緑原好のベッドの上で目を覚ました。
部屋の主である好はというと、布団の上から縄で縛られ身動きが取れない状態で床に転がっていた。
「好、自分がアイドルだって事を忘れないでね」
「はい……」
「さて、早く準備して出掛けようか」
特に予定が決まっていたわけでは無いが、昨晩の暴走から2人きりでいるのは危険だと判断した夏帆はそう言った。
「出掛けるって、ここなの?」
小さな子供のようにただただ夏帆について来ただけの好はその場所を見ると不満そうに言った。
「そうだけど」
当たり前のようにそう言った夏帆が好を連れて来たのは事務所1階にある喫茶店だった。
「やっぱりデートと言えば喫茶店よね。ここなら人の目もあるから好も襲いかかって来れないし」
「あぁ、うん。ソウダネー」
夏帆が自分と一緒に出掛ける事を『デート』と言ってくれたのは好にとってこの上なく嬉しい事だったが、中学生の女子2人が遊びに来る場所としては大人び過ぎているため、とても複雑な感情が渦巻いていた。
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