第256話 二人の出会い【冒険者との出会い⑥】

 「そろそろ良いぐあいに、完成じゃな?」


 セツさんが、調理場へ戻るとそんな声が聞こえてくる。銀色の大きな手持ちがついたお皿に、香ばしく焼かれたお肉が乗っている。


 「リブローストの完成じゃ~」


 小さなナイフを縦に切り目を入れていくと、溢れ出てくる……肉汁が切込口から全体へと匂いが広がる――


 「さすが、セツだな?」


 「見事な火加減をしておる」


 「綺麗に、こんがりと焼かれておるわい」


 薄く切られたお肉を薄ぺらい紙の様な生地に、野菜と肉と味付けした物を巻いて、手渡しで渡して下さる。こんなに薄い生地なのに、肉の脂が溢れてこぼれずに、濃縮している。


 心の中で、頂きますと言いながら最初の一口目を頬張ると口の中いっぱいに、肉の甘さと野菜の甘さがしっかりと絡みつき香りと味がまっちして、言葉を失うかのように、ぼーとしてしまう。


 「美味しいです」と食べ終わった瞬間に、出た言葉がそれだった。


 「そうか、それは、良かった」と微笑む二人!


 「あの……」


 「そんなに、みられていると……」


 「とても恥ずかしいのですが……」


 「いや~」


 「こんなに、美味しそうに食べてくれる子がこんなに若い子だなんて、思ってなかったからついつい見てしまったよ」


 「そうじゃな~」


 「儂らは、もう料理は、食べなれている事が多いいからロリーの顔を見ていると凄く新鮮でな?」


 「ついついと見てしまうのだよ?」


 「ま、儂らくらいじゃからなこんなにこだわりを持って、食事を趣味としているのは……」


 「ロリーは、まだ食べれるか?」


 「えっと、私を食べても美味しくないですよ?」


 「フッハハハハ!!」


 「お主じゃなくて、他にも肉料理があるが、お腹にはいるかと聞いたのじゃが、面白い事言う子じゃな!」


 「そうですね、あと少しくらいなら食べれますけど?」


 「そうか、ならデザート食べてからギルドに行くとするか?」


 「デザート?」


 「あ、良いミルクが手に入って、それで作った物じゃが、ダイトよそれでも良いか?」


 「ミルクだと?」


 「チーズ系かなにかかな?」


 「良く解るな?」


 「長い付き合いだしな、セツとは……」


 「あ、でも良いソースが無くてな?」


 「リンゴと蜂蜜を煮込んだ蜜なら、儂が持ってるからそれで、良いのではないか?」


 「お、それは、新作の蜜か?」


 「最近良い蜜が取れたので、それで試したら良い作品ができたのじゃよ?」


 「それなら、デザート用意するから、そこら辺の食べ終わった食器類をまとめて置いておいてくれるか?」


 「あ、それ、私がやります!」


 「いいじゃよ、お主は、今回メインで、呼んだのだから片付けは、儂らがやるからここに、座っておれ」


 「はい……」


 何て言うか、初めて会って間もないのに、この方々は、何てお優しいのだろう……家を飛び出して、一人で冒険に出てから一年半が過ぎたけど? 冒険でこんなに楽しい出会いがあるなんて、不思議なんですね……お外に出てきてこんなに、良かったと感じる事が出来て幸せです。


 私の心が、幸せに満ちている。そんな事を考えていると?


 「ロリーよ?」


 「上の空じゃが、大丈夫か?」


 「はい!」


 「問題ないれぇす!」


 「そんなに、慌てて返事返さないで大丈夫じゃよ?」


 「ダイトが連れてきた子なだけあって、良い声が聞こえてくるのじゃ~」


 「良い声?」


 「元気があってと言う意味じゃよ?」


 儂らは、二人して、笑顔で答える――


 「さて、机の上も綺麗になったし、デザートの準備でもするかのぉ~」


 「何かあったら言って下さい!」


 「お手伝いしますので!」と笑顔で答える少女だった。

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