第34話 林檎

 蛇がアダムとイヴをだまして、林檎を食べさせた。林檎は知恵の実だった。結果、アダムとイヴは楽園を追放され、荒野に落ちのびた。

 蛇がニュートンに林檎を与えた。ニュートンは林檎が木から落ちるのを見て、地上と天上の理を統一する大原理を考え出した。結果、人類は大繁栄した。

 林檎は確かに知恵の実だ。

 ニュートンとそれを信じた人類が楽園を追放され、宇宙へ進出した。

 蛇は、人類をどこへ導こうというのか。

 蛇は、ニュートンに林檎を与え、誘惑したのだ。地球を追い出し、宇宙へ人類を追いやるために。

 林檎。知恵の実。

 宇宙へ進出することになったきっかけ。

 蛇の見せたかった世界がおそらく宇宙にはあるのだろう。

 宇宙は地獄だ。

 とても人の住めるところではない。

 それでも、人類は宇宙へ行くだろう。もう知恵の実を食べてしまった。

 楽園にいられない人類の行きつく先は何なのか。

 蛇と神は、人類をどこに導こうというのか。

 人類はそこが死の土地、地獄だと知っても、宇宙へ行くだろう。この誘惑には勝てない。

 すべては、林檎から始まったのだ。

 三度目に林檎を人類が食する時、いったい何が起こるのだろうか。

 林檎という知恵の実には、あまりにも強い誘惑がある。とてもあらがえない。

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