Track 3 オデュセイアの恋人  Star Crossed Lovers

intro ハロー、スプートニク

 intro

 


 ハロー、スプートニク。

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 夜空に浮かぶ星に願いをかけてみても――

 その願いの全てが叶わないことを僕たちは知っている。


 それでも僕たちは多くを願い、そして多くを求めようとしてしまう。

 

 それを、僕たち人類のエゴだと断じることは容易いけれど――僕たちが願うことを、求めることをやめることはないだろう。

 

 それは、僕たち人類の原始的な欲求や欲望であり――

 僕たち人類を、人類と規定する物差しの一つだった。

 

 その物差しは一本のレールでもあり――

 僕たちは、そのレールの上を走る大きな列車に乗車していた。

 

 人類という名の列車に途中下車は無く、僕たちは先へ先へと進まなければならなかった。いずれ、人類がその存在を完全に損なってしまうか、もしくは僕たち人類が次のステージへと――


『完成』と呼ばれる段階へと移行するまで。


 人類は願い、求め続け――

 列車は走り続ける。


 僕たち人類の全ての願いを叶えるまで……


 これまで、僕たち人類には大きな転換点が幾つもあった――

 文字の発明、文明の発達、産業革命、大規模な戦争、テクノロジーの進化。


 その中で最も大きな転換点となったのは――

 間違いなく人類の宇宙進出だろう。


 人類は夜空に浮かぶ月を新しい開拓地とし――

 新しい時代の幕を開けた。


 月には豊富な資源があった。

『レゴリス』をはじめとする、地球で暮らす全ての人が湯水のごとく使っても使いきれない資源があった。


 そして、月には未来があった。


 いずれ多くの人類が、その人生を宇宙のみで営むという新しい未来の形があった。

 新しい時代、宇宙時代の到来を予感させる可能性があったんだ。


 新しい可能性と、新しい未来の形は――行き詰まりを見せていた人類の新しい希望となった。


 その希望には地球という青い星に――1Gの重力に押し込められて閉塞的になっていた人類に、もう一度、夜空を見上げさせる輝きがあった。


 夜空の浮かんだ星々に、願いをかけさせるだけの希望に満ち溢れていたんだ。

 

 そして夜空で一際明るく輝き、優しくも無慈悲に地球を照らす月は――

 この地球に新しい可能性を与える女王となった。


 現在、月には三つの『月面都市』が建設され、六千万人を超す人が月で働き――そして月面都市での生活を営んでいた。六千万人の内の約八割が月の植民者であり、その人生を宇宙のみで営むと決心した開拓者たちだった。

 

 植民者たちは新しい生活と仕事を求め、フロンティア・スピリットをその胸に宿して月に上がってきた。


 彼らは月の発展に貢献し続けてくれた。月の生活や習慣に順応し、新しいコミュニティをつくり、月を発展させ続けた。


 そして、その後に続くことといえば、結婚と出産であり――月の植民者たちは産めよ増やせよと、たくさんの子供たちを月で出産した。


 それが、さも当然のことであると言わんばかりに。


 宇宙に進出しても、人の定義は何一つ変わらなかった。

 恋に落ちて、恋をして、結婚をして――


 子供を産む。


 そうじゃない人類だってたくさんいたし、セクシャリティを越えた恋愛や結婚だって当たり前に存在したけれど――


 それでも人は恋に落ちて、結婚をして、子供を産んだんだ。


 僕たちの全てがそのようにして――

 誰かの愛から生まれたように。


 月にはたくさんの子供たちが――



『ルナリアン』が生まれることになったんだよ。

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