ひとりぼっちのソユーズ Fly Me to the Moon
七瀬夏扉@ななせなつひ
Track 1 ひとりぼっちのソユーズ Fly Me to the Moon
intro ユーリヤ
intro
ユーリヤのことを今も僕は思いだす。
もう、あれからどれくらいたったんだろうって。
そのたびに、ずいぶんたったんだなって――過ぎてしまった時間の膨大さに途方に暮れてしまう。
そして、浮かび上がる思い出の数々に耳をかたむけて、手を伸ばしてしまう。
ユーリヤが言ったみたいに、僕たちはずいぶん遠くまで行けるようになったんだよ。いろいろな問題を曖昧にして、棚に上げてしまったままだけど。
僕はユーリヤの『スプートニク』だった。
いつも君のそばにいた。君の話を聞いて、君の背中を眺めて、君の棚引かせる長い髪を猫のように追いかけていた。
こんなことを考え出すと、いろいろめそめそした気持ちになっちゃうから、本当はもっと楽しいことでも考えて、これから目の前に広がるはずの光景に胸をときめかせたり、隣に腰を下ろしているクルーにジョークの一つでもかましたりしたほうがいいと思うんだけど、やっぱり考えずにはいられなかった。
だって――僕はもう一度ユーリヤの背中を追って、もう一度ユーリヤの『スプートニク』になりたくて、君を『ひとりぼっち』のままにしておきたくなくて、今この場所にいるんだから。
そろそろカウントダウンが聞こえてくる。
僕は目をつぶって両手を強く組み合わせた。
それは、はたから見れば神様に祈っているように見えたかもしれない――
――だけど、僕は絶対に神様に祈ることはないんだ。
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