血が好き

作者 姫百合しふぉん

27

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★★★ Excellent!!!

 セックスです(率直)。
 人とは違う時間を生きるたった二人の「私たち」が、日本政府と軍に雇われて、時には戦い、物理学を研究し、セックスする。二人の生きかたには少しも特別なところはなくて、ただただお互いを愛して自分を愛して生きているだけ。それでも、彼女たちの「特別」さが、ただ平穏な日々を送ることを許さない。
 淡々とした「任務」──アクションシーンの、冷徹な殺人。そしてそれと実にうまくコントラストをなす「セックス」の暖かみが面白い作品です。彼女たちにとってはどれだけスリリングで危険に満ちた生活も、愛する女の子とのセックスに比べれば霞んでしまうような、くだらないことでしかない。一人称小説によってその価値観がハッキリ示唆されているのは技巧的です。
 そしてレズセックスの描写が本当に暖かい。人と人との、あるいは人じゃない者同士の心の繋がりそのもの。セックスで心を触れ合わせる二人の関係はとても不器用で、とても愛らしい。何気ない日常とセックスのシーンと、激しい仕事のシーンの連続で描かれる二人の「吸血鬼」そして、「吸血鬼」である以前に二人の「女」の日常は、人のそれよりもずっと人らしい愛に満ちているのかもしれません。
 そして底辺文系なのでうまく伝えることができないのですが、この作品には濃厚な物理学や数学についての会話が出てきます。主人公の澪には知識がないので、あくまでも専門の話は理解できないのですが、この理解の難しそうな理系の会話を実に砕けて愉快なものにする手管がすごい。じっさいの研究者同士の会話もこんな感じなのかな、と思うほどのリアリティで没入させられます。文系でもこうなのですから本職の方が読むとあるある感も味わえるのでは。
 レズが好きだったり、恋愛小説が好き、あるいは吸血鬼なんかの伝奇小説が好きな人は読まれたい作品です。
 冒頭レズパンチにめげない強いメンタル者を求めます。