何もないハコ

我が家にやってきたセールスマンは、掌サイズのハコを片手に「このハコを買って欲しい」と言ってきた。


「これは、なんですか?」

「これはハコです」

「それは、どんなハコですか?」

「何も入っていないハコです、とても魅力的でしょう?」


セールスマンはうっとりとそのハコを眺めている。私には何が何だかわからない。


「なにが魅力的なのですか?」

「何も入っていないから、何かを入れることができるでしょう」

「・・・えぇ、まぁ」

「つまりそこには何かが入る可能性があるのです」

「・・・・・・」

「私はその可能性を売っています」


そう言って男はハコを差し出す。差し出されたハコは不思議と魅力的に映り、少なくとも購入するに値するハコあるように感じたのだった。

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