(3)
*
「話は聞いていたにゃ」
「ええ。しっぽりと」
「それを言うならしっかりと、にゃ」
まるで夫婦漫才のようだが、本人たちからは割と本気モードが受け取れた。
ふすまを開ければ美人が二人。イケメンが、二人。
一人は猫神様。
もう一人は文さん(人間バージョン)だった。
「本当は第二ラウンドを期待していたのですが」
「猫神。それが例え本心だったとしても、言わない方がイイにゃ。イメージダウンするにゃ」
「肝に銘じよう」
相変わらずボケとツッコミが繰り広げられていますが……。
しかし、これで私たちが向かう手間は省けた。
「では、説明いりませんね?」
私は挑戦的に猫神様を見上げる。
彼(彼女?)はこくりと頷くと
「こっちきて」
と後方の部屋を指さされた。
「龍之介はわしだにゃん」
「それぞれみるんですね」
龍之介さんは頷くと文さんの後ろについて別の部屋に向かっていった。
「ふう。バカンスにきても縁をみるとはね。仕事とはいえ疲れるよ」
猫神は部屋の中心にどっかと座るとくいくいと私を手招きした。
「よ、よろしくです」
「ん、よろしくさん」
猫神は頷くなり私の顔面を凝視した。
「縁と言うのは身体中から見えるもの。薬指の赤い糸然り。瞳から溢れる慕情然り」
猫神は顔から眼を逸らせば今度は私の手のひらや指先を手に取ってしげしげと見始めた。
「猫神様の手、綺麗ですね」
「そうだね。お手入れは欠かさないから。手だけに」
「…………」
普段、神様って姿が見えないものだけどさ。
見えなくて良かったね、猫神様。
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