(2)



 *


「くうっ」

 龍之介さんが唸った。

(え、何かまずった?)

 よく、背徳的なシーンで現れるキーワード、「キスマーク」。

 イケメンの俺様系男子が好きな女の子の首元に口元を近づけては「これで俺のものって分かるよな(きらっ)」とか言うじゃないですか。

 そうするとその女の子の首元に赤い印が付くじゃないですか。

 そのキスマークを付けようと思ったんですが。


 失敗した模様です。


 え? だって、ただちゅってしただけじゃ印つくわけないじゃん。

 そもそもあれってどうやってたんだろうね。

 ってことで、吸血鬼ばりに噛みついてみたんだけど。

 一応、赤い痕(歯形つき)が残ったけど……。

 龍之介さんは苦悶の表情でうなされている。

 起きないのが不思議なほど。


「違ったのかなあ……。でも、あと三つぐらいキスマークつけたいじゃん? そうしたら三回噛みつくってわけだけど、それだと痛そう……」


 今更ながら己のしたことに疑問がわく。

 そもそもキスマークの付け方違うんじゃね?

 と。


「でもさ、そんなの誰も教えてくれないんだよ」


 とほほ、と落ち込む私。

 それから腕を組んでパンツ一丁のイケメンを見下ろしていた。

 何をしようか。


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