第4話

どうしたら良いのか迷ってると、お茶を持った九太郎が戻ってきて…

文さんは、九太郎の耳元になにかささやき、九太郎はまた部屋を出て行った。




「めぐみ、饅頭をもう一つ食べるにゃ。」


「あ、ありがとうございます。」


私は、受け取った饅頭をほおばりながら考えた。




つまり……

蘭丸は、さっきのことをうまく収めるために、やってもいない罪をかぶってくれたわけで…




(そんなの蘭丸が可哀想!本当のことを言わなきゃ…!)




でも、そのおかげで、なんとなくさっきの恥ずかしい出来事はうまくおさまり、しかも、私は龍之介さんと付き合うことになった。




ちらりとのぞき見た龍之介さんと視線が絡み合い、龍之介さんの穏やかな微笑みに、私は顔が熱くなるのを感じた。




(やっぱり素敵…!こんな素敵な人が彼氏だなんて夢みたい!

こんなチャンスを不意にするなんてもったいなさすぎる!)




じゃあ、やっぱりこの際、何も言わずに龍之介さんと付き合うべきか…

蘭丸も可哀想とはいえ、なにか酷い罰を受けたわけじゃない。

ここへの出入りをしばらく禁止されたってだけだもの…




物思いに耽っていると、九太郎が戻って来て、文さんに何事かをささやいた。




「龍之介…めぐみと付き合うことになったんにゃ。

こんなところにいないで、部屋に行ったらどうなんにゃ?」


「そうですね…では、めぐみさん…」


すっと自然に伸ばされた美しい手…

私は反射的にその掌に自分の手を重ねた。




「は、はい…」


手をつなぎ、二人で龍之介さんの部屋に向かった。

なんかすごくこっぱずかしーけど、気持ちはわくわく弾んでる。

だって、龍之介さんと付き合うことになったんだもの。

うん、やっぱり私が好きだったのは龍之介さんだったんだ!




「えっ!」


龍之介さんがさっとふすまを開けると、部屋の中には枕のふたつ並んだ布団が敷いてあった。



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