めぐみ、決死の大作戦!?

(1)



「たのもーう!」


 あ、間違えた。


「こんにちはー! 再びめぐみですー!」


 私はとにかくなる早で隣の家の呼び鈴を鳴らした。


 早く……龍之介さんに……。

 この……高鳴るボインを!

 見せたい!


 ちりんちりんちりんちりん……。


「なんだにゃあ。騒々しい奴にゃ」


 お、ようやく反応アリ。

 室内から文さんの声が聞こえてきた。


「めぐみですー」

「わかってるにゃーん。勝手に入るにゃ」

「お言葉に甘えます!」


 私は鼻息荒く、がらりと玄関を開けた――ら。


「あら」

「およ」


 玄関の角から曲がって出てきた一人の女性がいた。それは――。


「あらあら、東雲さんではないですか」

「……み、緑川ぼ……さん、こんにちは……」


 ――ボイン嬢こと緑川姫香だった。

 悔しい、先越された……と唇を噛みつつ、できるだけにこやかに「どうもー!」とあいさつして靴を脱いだ。


「あら、どういうご用件でしょうか? 私がお伝えしますよ?」


 緑川姫香はなんともにこやかに、しかし明らかな敵意を持ってそう告げた。


 ふむふむ。


 意訳すれば「お前はでていけ、用がないならさっさと立ち去れ」と言ったところか。


 はっはー、このめぐみ様に盾つこうと言うのか!

 今の私は無敵じゃぞ? 同じボインの土俵に立った以上、私は無敵じゃー!


 という強い意志を猫被りで隠しつつ笑顔で「いえ、大丈夫です」と好意(敵意)を退けた。


「……ずいぶん立派なパットをはめているご様子ですね」

「申し訳ないけど、これが地なんですよ」


 にこにこ。

 にこにこにこ。


 私たち二人の笑顔の裏で、雷が鳴り響いていた。


「おーい! 早く来るにゃ!」


 文さんが知ってか知らずか、奥で私を……ではなく私たちを呼んでいる。


「行きましょうか、東雲さん」

「ええ、緑川さん」


 なおも続く偽りの笑顔。

 私たちはまるでにらめっこのように笑顔をつきつけ合って奥の部屋に向かった。


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