(2)



 *


「こんにちはー」


 ちりんちりん、と呼び鈴をならす。

 ……返答なし。


「あれ? 今日は龍之介さんも文さんも在宅って聞いたんだけどなー」


 私は首を傾げて考える。

 ちなみに在宅と知っているのは蘭丸情報だ。


「もう一度鳴らそうかな……」

「やめたほうがいいにゃ。龍之介が寝てるにゃ」

「うぎょっ!」


 独り言に返事が帰ってきた!

 私はびっくり仰天! と飛びのきながら後ろを振り向いた。


「あ、文さん」

「おう。おはようにゃ」


 そこには蘭丸に負けず劣らずイケメンな人間姿の文さんが手拭いと桶を脇に抱えて立っていた。

 どうやら銭湯からの帰りらしい。


「おはようございます。相変わらずですね」

「うにゃ? なにが相変わらずだにゃ」


 それはもちろん、妖らしく神出鬼没と言う意味で。

 が、それは褒め言葉に取られないだろうと考え「いえ、相変わらず色男ですね、という意味で」と言っておいた。


「当然だにゃ」


 文さんはしかし誇らしげに頷くと鍵を開けて中に入っていった。


「何をしているにゃ。早く入るにゃ」

「あ、失礼しまーす」


 龍之介さんに会える! という嬉しさから語尾が上がりつつ部屋に上がった。


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