第2話

「はい、おしまい。」


「うわぁ……」


コケはもうどこにもない。

石の色もさっきまでと全く違う。

一皮むけたみたいに白くなった。

九太郎は、井戸の淵から中をのぞき込み、そして、唐突にその中に飛び込んだ。




「ぶわっ!」


水しぶきが私の顔をずぶぬれにした。




(九太郎の奴~~~!)




ま、汗だくになっていたとはいえ、井戸をぴかぴかに掃除してやった私に対してなんたる仕打ち…!

今度会ったら、あの皿にあつあつの目玉焼きを乗っけてやるからな~~!



そんな苛々した気持ちで、井戸の中をのぞいたら…




「ぶわーーー!!」


再び、水しぶきが窒息しそうな勢いでふりかかった。

殺す気かーーーーー!




「……ご主人様……」


目を開けると、そこにはずぶ濡れの九太郎がいて…




「これを……」


奴が何かを差し出したから、私は反射的に片手を出した。

そこに乗せられたのは、またまた石ころ。

透き通ってて綺麗だけど、どっからどう見てもただの石ころ…




「……これは?」


「お礼の品です。」


そう言うと、九太郎は再び大きな水しぶきを上げて、井戸の中にもぐって行った。




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