武者震いである

(1)



「ふふ……ふふふ」

「やめにゃいか。不気味にゃん」


 なんとも律儀に玄関まで送ってくれた文さんに容赦ない突っ込みを受ける。

 しかし私はこれからを思うだけでとても楽しかったのだ。


「恋のライバルがどんな人だろうと、私は勝つわ……」

「だから難しい……って、聞いてないにゃん」


 文さんはブツブツと独り言を言えば、はあとため息をつく。

 お忙しいですね。


「確かに楽しくはなりそうだが……。なにより龍之介が大変だにゃん。儂と同じく、モテる男は辛いにゃん」


 しかし言葉とは裏腹ににゃははと彼は笑っていた。



 *



「お邪魔しましたー」

「おう。また来るにゃん」

「はい、また来ます」


 私は会釈を文さんに返した。

 文さんはひげを撫でながらにゃははと上機嫌そうにうなずいている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る