読書感想文『ブラックサマーの殺人』感想(超ネタバレ)
『あれ? 期待したほどじゃなかったアルヨー』
この作品を読んだ実は小生の最初の感想は『これ』でした。
もちろん前回書いた感想は嘘ではありません。
ただ『あちら』は最終感想のまとめだったわけです。
なぜ小生が最初微妙だと思ったのかと言いますと、読んでいて『おかしなところ』がたくさんあったからです。作者様がミステリー小説の『禁じ手』の一つを今回の作品でやってしまったからです。
小生も、
『二作目だし。まあ、物語を盛り上げるためにやっちゃったかなー』
と思っていました。
ですが、
『前作ほど構成力が高い作品を書いた作者がそんなミスをするだろうか?』
という疑問が次第に湧いてきました。
なので小生はぐるぐるしながら考えました。
ぐるぐる
ぐるぐる。
そこでふと気付きました。
この作品に仕掛けられたもう一つの『トリック』に。
それに気付いた瞬間、バラバラだった全てのパーツが『逆に』一つに繋がり、この物語の『テーマ』が浮かび上がったのです。
これにはちょっと驚いたというかビビりました。自分が不満に思っていたシーンがほぼ『説明』できるようになり、今回の物語に配置されていたパーツが『意図的』であったことを理解したわけです。
超ネタバレなので少しだけ書きますが、今回のテーマは『真実』です。
しかもそれだけではなく『真実を見抜くことの難しさ』がテーマだと思われます。
人がなぜ真実を見抜けないかと言えば『真実とは違うことを考える』からです。
その象徴となるのが今回の『メイントリック』でしょう。
たぶんこれも『わざと』このトリックを使ったものと考えられます。登場人物がそのトリックに気付かないのも、『真実とは違うこと』を考えているからなのです。
『そうに違いない』
『そうあるべきだ』
時として人は『真実』を自分にとって都合のいい『現実』に書き換えます。
そして、人はその行動をこう呼びます。
『思い込み』あるいは『妄想』と。
今回の『主人公』もそんな『思い込み』や『妄想』に囚われた結果、『真実』をなかなか見抜くことができませんでした。普段は聡明である『相棒』ですらその思い込みに囚われてしまうというのが今回の物語だったというわけです。
だからこそ今回のオチは『あれ』でなければなりませんでした。最初は不満に思っていた小生ですが、テーマから考えると『あれ』が相応しいことが理解できました。
というわけで久しぶりに一週目で読み間違えた作品となってしまいました。いや、言い訳を言えばミステリーを読んでる人ほど、今回の罠に嵌って誤解したまま読み終える可能性があると思います。
そこに『思い込み』があるからです。
『ミステリー小説とはこうあるべき』という。
えーと、『超ネタバレ』でもこの辺りが限界ですかね。
これ以上書くと作中の意図を具体的に解説しないといけませんし(汗)
(ちなみに以前これと近い構成で製作されたアニメを見たことがあります)
(禁じ手を使いつつ、それを反転させるという手法ですね)
まあ、作品としては素晴らしい近作ですが、ちょっと『テーマに寄り過ぎている』という欠点はあると思います。物語としても面白いし、テーマも素晴らしいですが、ミステリーとして考えると評価が分かれるかなーと思います。
ある意味ではこの作品そのものが『読者(ミステリーファン)に仕掛けられたトリック』と考えることもできるわけですが、そもそもそれに気付かない読者も多いと思いますし、その『メタミステリー』みたいな部分をどう評価するかというのは難しいところでしょう。
個人的にはとても素晴らしい作品でした。
次回作も大いに期待できる内容でふね。
この構成力は見事だと思います。前作の『虐め』のシーンもそうですが、作者様がきちんと『意図』してそのシーンを物語に組み込んでいるのはふつーに凄いです。
いや、前回は『まぐれかもしれない』とは思いましたが、今回の作品を見る限りでは明らかに『理解』したうえで物語を構成しているのがよく分かりました。
まあ、構成に拘り過ぎている部分もあることはあるのですが、それでもこの完成度ならば素晴らしいと褒めるしかありません。ただミステリーに読みなれてない人はこの仕掛けに気付かないんじゃないかなーとは思いますけど(汗)
ただ気付かないとしても十分に面白い作品ですのでその辺りはご安心を。小生の場合は理解できない部分があったので読み終えた後に『あれっ?』と思っただけです。
物語の内容が変わるわけではなく、あくまでも『テーマ性』の部分が深堀されるだけなので物語としての面白さは変わらないです。
主人公の追い詰められっぷりと相棒の頼もしさが堪能できる物語となってます。
その辺りが楽しめる方にはおススメできる作品でし。
終わり。
<テーマ性という諸刃の剣>
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