読書感想文『ネットワーク・エフェクト』感想(ネタバレ)

 小生待望の『マーダーボット・ダイアリー』の続編でーす。

 この手の作品は『翻訳を打ち切られておさばら』というのも多いので、続きが読めるのは嬉しいことですね。


 内容も面白くて『期待通りの第二巻(正確には三巻目)』という感じの内容でした。前作が楽しめた方は近作も楽しめることでしょう。


 今回は前作にもあった『警備』という要素に加えて、スペオペ定番の『冒険』というような要素も増えており、読んでいて懐かしさすら感じる『SF冒険活劇』というかつての『SF王道作品』となってます。


 未知の敵に、未知の状況、未知の脅威。主人公たちは『様々な謎』に包まれた状況の中で生存しなければならないわけです。


 まさに『王道』です。

『スタートレック』とか思い出すような感じですね。


 そこに更に主人公の『独特な語り』が加わって更に面白い。ただ昔の王道を今に蘇らせただけではなく、きちんと現代に合うようにアップデートされた作品です。


『様々な価値観』を入れているのも作者様の意識的なことでしょう。

 人間とロボットの価値観の違い、人間同士の価値観の違い。


 社会構造の違い、倫理観の違い。

 その違いがもたらす摩擦。


 そういった要素が表現されているのも『SF』というジャンルの特長でしょう。


 例えば作中で『プリザベーション連合』は平和で暮らし易い社会構造に見えます。

 確かにそれは正解です。一つの集合体としては上手く成立した世界でしょう。


 反面、前作から通して『外敵』には弱い存在として描かれています。

『人間の悪意』を前提に行動しないため、容易く騙され酷い目に遭ってしまいます。


 更に金銭的にもそれほど余裕が無く(企業側に比べて)、『平和な社会』であるからこそ彼らは『悪意のある社会』に対抗する手段が少ないという欠点があります。

  

 逆に企業側はこの作品では『悪役』のように描かれています。

 色んなものを食い潰し、それで儲けている『商人』たちです。


 一方で彼らは多額の資金を得て、豊富な装備を持ち、一部の人々は豊かな人生を謳歌していることでしょう。上に立つ事さえできれば、彼らはより豊かで幸せな人生を手に入れることができるわけです。


 これらはどちらが良い悪いという『善悪の問題』ではなく、それぞれが異なる『価値観』『社会構造の違い』を描いたものだと思います。


『他者と分かち合う幸福』と『他者から奪い取る幸福』の違いですね。共通していることはそれぞれが『お互いの価値観』を理解しがたいということでしょう。


『価値観の多様性』というのは様々な価値観を認めることです。

 ですが、それは『様々な価値観』がぶつかり合うということでもあります。


 騙す方が悪いのか。

 騙される方が悪いのか。


 その答えもそれに『答える人間の価値観』によって異なるわけです。

 

 SFというのはそういう『価値観の違い』を表現するジャンルでもありますので、『価値観の多様性』とか騒いでいる方々はもっとSFというジャンルを復旧させるために努力しましょう。オチです(笑)


 ま、難しいことは考えずにふつーに『スペオペ』として面白いのでお薦めです。

 前作よりも人間関係が広がって主人公がめっちゃ困惑してます(笑)


 このシリーズは『人型警備ユニット』である主人公の成長物語でもありますので、そちらの方面でも楽しめる内容となってます。前作から引き続き『ドラマネタ』もありますよー。


 さてさて、すでに続編の翻訳も決まっているようなので今から楽しみですね。

 どんどん世界観が広がっていっているので、長く続いて欲しいシリーズです。


 ああいう展開とかこういう展開とか妄想が広がります(笑)

 でわー今回はこの辺で。


<カトー>

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