小生小説講座『背景 2』

 前回までの24


『ジャック・バウアーが邪魔者を殴りまくる』


 ……こういう小ネタを入れるから長くなるというものです。

 反省! でも、この駄文の90パーは小ネタなので反省しても改善はせぬ!


 さて、前回は『背景』という名の『世界設定』について語りました。

 ということは、ということは、今回は!


 ずばずばずばずばどーん。


『キャラクターの背景』です。

 これ超重要あるよ。アルアルヨ。


 さてさて、そろそろ真面目にやらないと話が進まないので真面目に書きます(笑)

 でわ、諸君。『キャラクターの背景』と聞いて何が思い浮かぶでしょうか。


 まあ、これに関しては直球なので思いつく方もいるでしょう。

『キャラクターの背景』すなわち『過去の背景』です。


 当たり前のことですが、キャラクターには『本編以前の過去』が存在します。ぽんとそこで生まれたわけではありません。そこに至るまでの人生が存在するのです。


(注:ホムンクルスなど無い場合もあります)


 例えば『第一話でトラックに引かれて転生する主人公』がいたとしても、彼/彼女にはトラックに引かれる前の人生があり、間違いなくそこで過ごした人生が転生後の人生にも影響を与えるはずなのです。


 その人間が『病弱』だったとしたら転生後は『健康になったことを喜ぶ』かもしれません。あるいはそんな『運命の皮肉を嘲笑う』かもしれません。


『力を持っていなかった人間』が転生後に凄い力を得れば、それを良いことに使うかもしれませんし、逆に悪いことに使うかもしれません。


 過去とは『理由』であり『動機』です。

 キャラクターとは何も考えずに動く人形ではありません。


 彼ら/彼女らにはそうする『背景』があるのです。

 その辺りを手抜きしてしまうとキャラクターの行動がぶれぶれになります。


 ので、実は『物語の前に何があったのか』というのがキャラクターの行動を決める(キャラクターを動かす)うえで重要な要素になります。


 もっと分かり易い例えで言うならば、最近この『過去』を使って大ヒットしている作品が二つあります。


 英雄という伝承をキャラクターの過去に配置した『Fateシリーズ』

 敵味方問わずに登場人物に辛い過去を背負わせた『鬼滅の刃』


 この二つは『キャラクターの背景』を上手く利用してヒットした作品です。

 

『Fateシリーズ』に関しては世界中の神話や伝承がそのまま出てくる『英霊』の過去として利用できるという強みがえぐいです。全員が『二週目』状態なので背負ってるものが全然違います。


『鬼滅の刃』に関してはキャラクターの過去を明らかに意識した作りになってます。作中でも何度も『過去の話』をやりますし、それを味方だけではなく敵にも配置したのは上手いです。更にそれが『絶対的な悪』の存在を浮き彫りにするという構図になっています。


『過去』というのはキャラクターがそこに至るまでに背負ってきた『物語』ですから、そこをきっちりと作りこめばキャラクターに『厚み』が出ます。


 例えば『主人公が最初から強い物語』を作るとしてまして。

 物語が始まる前に彼にはそこに至るまでの『過去』があるはずです。


『過酷な修行を耐え切った』とか。

『天から与えられた才能があった』とか。


 でも、ここで終わってしまうとまったく『厚み』が出ないので、更に想像を膨らませる必要があります。


『修行』の場合は『どんな修行だったのか』とか『なぜその修行を受けたのか』などの細部を細くしていくと良いでしょう。


『師匠はどんな人物だったのか』とか『一緒に修行を受けた人物はいるのだろうか』とどんどん掘り下げることができます。


『才能』の場合は『その才能を得たことによって主人公がどんな人生を送ってきたのか』という部分が主になるでしょう。


『才能を使いこなした』かもしれません。それとも『才能に振り回された』かもしれません。主人公は『自身の才能』をどう思っているでしょうか。憎んでいるでしょうか。喜んでいるでしょうか。当たり前だと捉えてるかもしれません。


 そして、その力を得たことによって『主人公を何を成したのか』という部分も重要でしょう。あるいはこれから何かを成し遂げるのかもしれません。


 こういう要素を使用した作品が『魔法科高校の劣等生』になります。

 WEBにおける『劣等性ブーム』を作った作品と思われ。


 ちなみに『チート』を使用した作品に関しては『主人公が強い』という部分の理由付けの弱さが弱点になります。


 そのため『チート能力』ぷらす『努力』を組み合わせたり、『チート能力』ぷらす『才能』を組み合わせたりすることによって、そこに何とか『説得力』を生み出そうとしているわけです。


 ですが。 

 ですがですが。


 チート作品でもまったく『過去を背負わない作品』もあります。『現世に未練も無く、何の苦労も無く力を手に入れる』という『なろう作品』という言葉を作った素のような展開です。


 はっきり言えばここに『過去』はありません。

 ここで重要になるのはもう『一つの背景』になります。


 それはいつか過去となり、未来へと繋がるもの。

 すなわち『現在の背景』です。


 今を積み重ねることによって『過去』という厚みを作る手法です。またまたはっきり言えばこれも当たり前のことです。物語を作る人間は普通にやってます。


 ですがですが、これがきちんと出来ている作品と出来ていない作品があるわけです。物語というのは一部の例外を除き、連載が続けば続くほど物語に厚みがでなければなりません。


 登場人物というのは『不変の存在』ではなく、物語を通して経験したことによって変化していきます。考え方も変わるでしょう。辛いことも経験するかもしれません。


『物語が始まる前の過去』がキャラクターを『形作る』ように『物語が始まった後の過去』もまたキャラクターを『変化』させるのです。


 一般的にチート作品というのはチートを『得る前の過去』が重要なのではなく、チートを得た後に『何をするのか(何をもたらすのか)』『何を感じるのか』『(本人が)どう変化するのか』というのが重要な作品になります。


 まあ、中には勧善懲悪の娯楽を割り切ってしまう作品もあります。

 小生はこれを『水戸黄門型』と読んでいます。


 これは潜在的に人が好む物語なのでけっして間違いではありません。

 どちらかというと『善人が報われる昔話』に分類される系統でしょう。


 ただこの『水戸黄門型』はマンネリ化し易いと言うのが最大の弱点です。

 基本的に『変化しない』『成長しない』ので読者に飽きられるわけです。


 ので、基本的には『現在の背景』を利用して、連載を続けていく過程で物語を変化させるのが長期連載の基本です。


『リビルドワールド』はこちらの『現在の背景』を上手く利用して物語を次々と変化させていく作品です。世界設定の部分に『過去の背景』を利用して、少しずつ情報を提示していく形となっています。


 ……えーと、ここまで説明して何ですが、『背景』って難しいでち(汗)

 思ってたのより二倍ぐらい説明するのがめんどくせーです(爆死)


 ただこういうのはあくまでも『技術』であり『考え方』に過ぎません。『水戸黄門型』の作品を作りたいなら、別に『過去の背景』を盛り盛りにする必要はありませんし、『物語の背景』だって綿密に作る必要もありません。


 その場合、重要なのは『読者がすかっと気持ちよく読めるか』という部分なので、『憎たらしい悪党』を考えることに力を注いだ方がいいでしょう。


『悪党には壮絶な過去があって、悪には悪なりの矜持がある』


 とか、そういうのは要らんです。

 ここで必要なのは後腐れなく倒される敵です。


 この『背景』というのは必ずしも使わなければならないわけではなく、『必要に応じて使ってください』です。


 必要になってからキャラクターの過去とか世界設定とか考えてもいいわけです。『後付』と呼ばれるのでベストの手法ではありませんががが。


 というわけで小生が分かり易くまとめてやろーでわないか。


『世界設定はなるべくきちんと考えておく』

『但し設定で物語を殺さない程度に』


『キャラクターの過去は形を作るための要素』

『過去の設定で説得力を増すことができます』


『物語とは今を積んでいく作業』

『続ければ続けるほど高く飛べます』


 何か違う気もしますが、これでいいや(てけとー)

 あと分かり易い例を挙げるなら、これを全部やったのが『ワンピース』です。


『世界設定』はそのまま。『キャラクターの過去』は仲間になるときとかに使用。

『現在の背景』を積み重ねた結果が『頂上戦争編』の面白さになります。

 

 売れている作品というのはこの『背景』を上手く使ってる作品が多いです。

 まあ、皆様方も無理せずに一つ一つやってみましょう。


 前回と今回の駄文を一言で表すなら『作品を掘り下げる』です。

 ある意味では『連想ゲーム』みたいなものでもあります。


 原因があり、理由があり、結果がある。

 一つの要素には様々なものが付属します。


 重要なのは考えて、理解すること。

 理解したうえで、それが面白さに繋がるのか把握すること。


(読者に説明する必要が無い文章は書く必要がありません)

(例え過去があったとしても、その全てを提示しなくてもいいのです)


 今まで何となく書いていた作品を『必然レベル』にしなければなりません。

『偶然レベル』で書いているとただの『一発屋』になってしまいます。


 上手い人はどんな作品を書こうが、作品の掘り下げが上手いです。

 それが売れるかは面白いかは別として、作品の厚みが違います。


 キャラクターの台詞一つとっても『テンプレ』じゃないことが多いですし。

『作者が喋らしてる』のではなく、ちゃんと『キャラクターが喋ってる』のです。


 まあ、まずは、


『キャラクターのプロフィールを完璧に埋める』


 ということころから始めて見ましょう。これはどんな作品でも応用できるのでこの辺りからがおススメですかね。それは『作者がキャラクターのことを理解してますか?』ということでもあります。


 何となく物語を作るのもいいですが、一流の作家さんはたいていめっちゃ下準備してますので、一つの作品を徹底的に作ってみるのも勉強になるでしょう。


 別に『設定』だけを作って残しておいてもいいわけです。

 物語として書かなくても、それをすること自体が良い勉強になりますから。


『もし自分がこんな物語を作るとしたらどんな設定を練るか』


 そういう設定を残しておくと自分の中の引き出しが増えます。

 一つの物語を作るために考えることは多し。省エネも重要。


 ですが、きちんと自分の作品を向き合うことも重要です。

 例えそれが面白く無かったとしても、面白く無かった理由がそこにはあるのです。


 WEB小説は無料ですから、失敗を恐れてはいけません。

 むしろ上手くなりたいなら、成長しないことを恐れましょう。


 実際のところ小説においてもっとも難しいと思われる『文章の良さ』というのはそこまで必須ではありません。むしろ『センス溢れる文章』を書ける作家さんの方が少ないです。


 それよりも『自分の書きたいことをきちんと伝えていることができるか』ということの方が重要です。それが出来ていれば文章が陳腐だろうが凡夫だろうが致命的ではありません。重要な場面での詞的な才能はちょっと欲しいですけどネー。


 文章の平凡さというのは物語の『つまらなさ』ではないわけです。

 文章が平々凡々でも面白い物語はたくさんあります。


 ので、がんがれ(投槍)

 いや、ここまで書いてきて疲れたんテス。


 難しくて、この駄文を書いてる最中に寝落ちしちゃいましたよ(笑)

 最近、甘いもの食べないと頭が動かなくて困ります。


 ギブミー糖分(ばたり)


<完>

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