カワカミンのススメ(都市シリーズ編)

 別名『川上稔のススメ』です。

 

『興味があるけど、どの作品から読めばいいか分からない』

『作品同士の繋がりがよく分からない』


 などなど、『川上稔』氏の作品は面白いですが、若干難易度が高いという事実もあります。そんなわけで、小生が一ファンとして個人的に解説していこうという企画。


 あくまでも個人的なので、あちこち違うかもしれませんが、それはそれで(笑)

 小生の記憶だって曖昧なんですヨー(汗)


 そんな感じで始まるこの企画。

 まず『川上稔』氏の作品で最初に読むべきなのは、


『都市シリーズ』(CITY)


 です。『魔界都市』の方ではありませんよ(ボケ)

 これが最初に書かれた作品(シリーズ)になります。


『パンツァーポリス1935』から『電詞都市DT』まで。それに『創雅都市S.F』と『矛盾都市TOKYO』を加えたのが『都市シリーズ』です。


 ゲーム版『奏(騒)楽都市OSAKA』も書き下ろしシナリオなので、これも『都市シリーズ』の一つに数えられます。書き下ろし。素晴らしい響きですな(笑)

  

 まあ、ここで『あらすじ』とか細かい部分までは紹介しません。

 ネットですので、調べたほうが早いです。省略の美学です。


 この『都市シリーズ』が『川上稔の基礎である』ということを、理解して貰えれば問題ないかと。一から読むならば、このシリーズから入るべきかとかと。


 ただここで難しいのは、『都市シリーズ』から読み始めると、おそらく途中で挫折する読者が多くなるということです。これは『都市シリーズ』が面白くないというわけではなく、ちゃんとした別の理由があります。


『都市シリーズ』は一つの世界を描いたシリーズ作品なのですが、各作品が単独で成立するほど別の作品でもあります。これは作品の舞台となる『都市』がそれぞれ違う法則や技術で成り立っているという特殊な世界観だからです。


 これが『都市シリーズ』の特徴であり、欠点でもあります。

 簡単に言えば、


『一つの作品が面白くても、次の作品が面白いかは分からない』


 こういうことになります。作品の一つ一つが『同じ作者が書いた別シリーズ』みたいなものですから、その作品によって面白さが変わります。小説の書き方も作品ごとに違ってたりするので、更に好みが分かれます。

 

 そのため、ファンの間でも作品ごとの評価が分かれ易いのです。

 どの作品を読めばいいかと言われても、けっこう困ってしまうわけですヨ(汗)


 それでも小生としては『都市シリーズ』から読んで欲しいと思います。

 これにもちゃんと理由があるのですが、それは後述ということで。


 個人的にお薦めなのは『風水街都 香港』か『奏(騒)楽都市OSAKA』ですね。

 まあ、『風水街都 香港』は難解という読者もいるので、あれですが。


 ちなみに『さとやす』氏がイラストを手掛けたのも、この『風水街都 香港』からです。たぶんいろんな事情がありそうですが、詳しくは知らないのでカット。もともとは作品ごとにイラストを変えたかったのかなーとも思いますね。


『奏(騒)楽都市OSAKA』は日本が舞台ということもあり、ファンの間でも評価が高い作品です。もしかすると、当時よりも今の方がこの世界観を受け入れる読者が多いような気もします。ちょっとゲーム的でもありますし。


『ゲーム版OSAKA』も小生がプレステベスト作品の一つに数えるほど面白いゲームなのですが、小説の『都市シリーズ』よりも癖が強いので、これまた難しい。プレイして楽しめないと、この面白さは伝わらないと思われ。


 ある程度『都市シリーズ』の知識があった方がより楽しめるという部分もあるので、小説が面白かったらプレイしてみるがよろし。合う人にとっては唯一無二ぐらいのゲームなんですががが。


 読み易い作品は『パンツァーポリス1935』ですね。むしろ『都市シリーズ』だと読み易い作品はこれだけかもしれません。この作品でデビューしたということもあり、読み易さと分かり易さを意識した作品かなーと思います。


 今読むと古臭さはありますが、王道的な面白さは変わらなかったです。

 駆け抜けるような面白さに衝撃を受けたことを今でも覚えていますヨ。


 二作目の『エアリアルシティ』は一作目とは違った作風になるので、ちょっと難解になりますね。当時はこういう雰囲気の作品も多かったので、今読むと懐かしい気分になる作品でもあります。そのため、今の読者とはあまり合わないかもしれません。


『矛盾都市 TOKYO』は小生の読書人生に大きな影響を与えた作品です。

『小説とはここまでできるのか』と改めて思い知らされた作品でもあります。


 これも読む機会があるなら読んで欲しいですが、今となっては難しいですかね。

 たぶん『都市シリーズ』の小説では一番癖が強い作品ですががが。


『川上稔』氏の作品は『後書き』も面白いので、この辺りも楽しんで貰えればと思います。個人的には『時雨沢恵一』氏と同じぐらい好きですね。あちらはもっと特殊ですけど(笑)

 

 思い出話はまだありますが、全部書くことになりそうなのでカット(汗)

 こんな感じで小生はこの『都市シリーズ』という一連の作品を楽しんだわけです。

 

 それは今でもなぜか鮮明に思い出せる記憶の一つです。

 不思議なことに。


 その理由はおそらく一つの疑問があったからだと思います。

 この『都市シリーズ』という一連の作品に対して、小生はこう思いました。


『なぜこんな書き方をしているのだろうか?』


 それは『都市シリーズ』を読んでいくうちに、小生がいつの間にか得ていた一つの疑問でした。


 一つの『都市(作品)』ごとに新たな設定を次々と作り出していく。

 それはまるで膨大な設定を使い捨てにしているようでもありました。


 評判が良い作品があっても、その続きを書かないで別の設定を作り出す。他の作家さんが評判の良い物語の続編を書いていく中で、『川上稔』氏は一つの世界に次々と新しい設定を盛り込み続けていました。


 当時、その創作方法は高く評価されず、どちらかというとマニアックな作家さんという評判だった気がします。多くの読者が読む作品というより、一部の物好きな読者が好む作品みたいな感じだったかと。


 一作品ごとに雰囲気を変えるという意味では『ブギーポップシリーズ』に近いものがありましたが、『都市シリーズ』は一作品ごとの繋がりが弱いという欠点がありました。登場人物をほぼ共有していなかったというのが大きかったと思います。


『都市シリーズ』自体は続いていたので、売れていたとは思うのですが、あまり話題にならなかった作品というイメージはありますね。友人と『都市シリーズ』の会話をした記憶がありません。たぶん一人でこっそり読んでいたと思います(汗)


 小生はこの『なぜ』という疑問に深く考えませんでした。

『こういう書き方が好きな作家さんなんだろう』と思ってました。


 その疑問は一つの作品が出版されたことにより解き明かされます。

 それが『終わりのクロニクル』です。


<続く>

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