読書記録『製造人間は頭が固い』(超ネタバレ)
『上遠野浩平』氏の書いた『ブギーポップシリーズの番外編』というお話。
物語自体はけっこう複雑で、『上遠野浩平』氏の作品をある程度把握していないと意味が分からないところが多く、ファン向けの作品である。
ただ物語の構造としてはわりとシンプルになっていると思う。
今の求められる価値を作り出す『製造』と今ある価値を取り替える『交換』
そして、新しい(無)価値を誕生させる『創造』という三つの価値観の物語。
『創造』の多くはいずれ『製造』され、『製造』されたモノは『交換』することができる。『価値あるモノ』がいつの間にか『無価値』となって、『無価値だったモノ』に『価値』が見出されていく。
『創造』は偶然に過ぎず、新しく生まれた『無価値』が世界に受け入れられるためには一定量の『製造』がなされなくてはならない。そこで『製造されたモノの価値』は他のモノと『交換できる(理解できる)価値』でなくては淘汰されてしまう。
だが、その『創造』を偶然ではなく、『奇跡』として実現できる『異端児』がいる。『製造』に価値を求めず、『交換』で価値を増やさず、『無価値の奇跡』を創造する者。『世界の価値』を『無価値』で意図的に引っくり返してしまう革命家。
この物語の『製造人間』にもその可能性はあったが、彼はあくまでも多数派(今)のために『製造』する道を選んだ。
彼がもし『ナニカ』を『創造』をしたとしても、それはただの『偶然』に過ぎない。彼の役割はあくまでも『求められる価値を製造すること』だけなのである。
そんな『製造人間』が意図せずに『製造/創造』してしまったのが『彼』であり、それゆえに見極めようとしているというのがこの物語の『主題』だろう。
ま、この物語も『上遠野サーガ』の一つに過ぎず、生きている登場人物たちにとってはあくまでも通過点。多くの未来はまだ終わりを迎えていない。
それがどうなるのか、というのはこれからの語られるべき物語である。
終わり。
<てけとーだけどね>
<いつものことじゃないか>
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