FGO日記 序章編

 これは小生による小生のための小生の『FGO日記』である。

 と言っても、当時の記録を残していたわけではないため、小生の記憶や外部の記録を元に当時の状況を思い返すための文章である。


 正確性には書けるため、その点はご注意を。

 憶測や推測に基づいた文章も含まれるので、そこもご注意を。


 では、過去への旅を始めましょう(ぺこり)


―――――――



 その名前を最初に聞いたのは一体どこだっただろうか?


 もう思い出せない始まりの記憶。

 長い旅の果てに失われてしまった思い出。


 全ては『Fate/Grand Order』という一つの名前から始まった。


 断片的に語られる様々な情報。

 新しい未知なる『Fate』

 

 必ず面白い作品を作ってくれる。

 小生は期待に胸を躍らせた。


『TYPE-MOON』に対する小生の信頼は絶大なものがあった。

 唯一の不安は、それが『スマホゲー』であるということだけだった。

 

 小生は迷った。

 それは迂闊に手を出してはいけない領域だったのである。 


 この時期すでに『スマホゲー』の評判は悪く、『札束で殴りあうゲーム』という評価を度々耳にしていた。そんな世界と関わり合うのは、ちょっとどころか、なるべく遠慮したい、というのがもう一つの正直な感想だった。


 だが、『Fate』である。『TYPE-MOON』なのである。

 これを逃せば一生の後悔になる、という感覚が小生にはあった。


 その誘惑から逃れるすべは、少なくとも小生には無かった。

 小生は自ら未知の扉をこじ開けたのである。


 当初、2015年の春頃に配信予定だった『FGO』だが、ほとんどのファンが驚くことなく延期された。いつものことだった。その後、2015年の夏予定になり、最終的には7月30日に配信されることとなった。


 この辺りのお話は公式連載『ぐだぐだオーダー』に多少経緯が残されており、『6月までは春』というゲーム業界の名言を生み出しました。最終回の言葉など、予言の書とでも言うべき言葉でしたが、詳しくはカット。興味があれば自分でどぞ。


 いざ『FGO』プレイしてみると『序章の面白さ』に、これは『勝ったな』と思った。戦闘演出などが微妙だったが、これは『スマホゲーだから』だと納得することにした。


 このときの小生は何も気付いていなかったのである。

『スマホゲーだから』という言葉の恐ろしさを。

 小生が開いた扉の先は、底知れぬ『天国と地獄』であったことを。


 最初に始まった地獄は『メンテ地獄』であった。

 もっとも『スマホゲー』で配信初期にトラブルが起こることは珍しくない。むしろ普通であると言えるだろう。


 だが、この『FGO』はスマホゲー史に残ってもおかしくないほどのトラブルを多発させてしまったのである。

 

『キャッシュクリアでデータもクリア事件』

『解析データ大量流出事件』(製作者の問題ではないが)

『ガチャ確立混合事件』

『素材未実装事件』

『戦闘モーション速度問題』(一部未解決)

『孔明弱すぎ問題』(孔明強すぎ問題に変化)


 あまりにも多発するトラブルに、小生を含むプレイヤーたちは戸惑った。

 メンテ回数もかなり多く、詫び石が驚くほど配られた。


『なぜ、こんなことが起きるのだろうか?』


 気付いたときにはすでに手遅れだった。

 すでに誰も引き返せない場所に来てしまっていたのだ。


 プレイヤーたちも、製作者たちも、不完全のまま始まってしまった『FGO』という作品に戸惑いながらも、先へと進むしかなかったのである。

 

『スマホゲーの開発にまったく慣れていない』


 なるべく言葉を選んで表現するならば、この時期のトラブルはそういうことだったのだと思う。その言葉が正解なのかは、プレイヤーである小生には今でも分からない。


 ただ様々なことが手探りで作られていたように感じていた。少なくとも『ベテラン』が作っている、というような安心感は感じられなかったのである。


 おそらくそこに『スマホゲーだから』という言葉の恐ろしさがあったのだ。

 それは『ライトノベルだから』という言葉と似ているかもしれない。


『Fate/Grand Order』は所詮『スマホゲー』である。

 プレイヤーも、製作者も、たぶんそう思ってしまったのだと思う。


『スマホゲーだから』作れるという慢心があったのではないか?

 その後の小生は何度もそう思った


 もちろん時間的なこともあるだろう。

 もちろん資金的なこともあるだろう。

 

 プレイヤーの人数の多さ、アクセス過多という理由もあったのかもしれない。


 だが、戦闘モーションの使い回し、宝具演出の微妙さ、ぶつ切りになってしまうシナリオ。これらのことは全て『スマホゲーだから』という言葉に集約されるような気がした(フォローもあるが、今回はカット)。



『三ヶ月でサービス終了』

『Fateじゃなければ絶対にプレイしない』


 そう言った評価がWEBで囁かれ、


『Fateという物語の終焉』


 一部のプレイヤーからは、そう思われるような作品となってしまっていた。

 多くのプレイヤーは複雑な思いを抱えていた、と思う。

 

 なぜ『スマホゲー』で作ろうと思ったのか?

 たぶんそれが当時のプレイヤーの正直な感想だろう。


『スマホゲー』は儲かる。

 誰が言ったか分からない魔法の言葉。


 だが、その領域に辿り付ける作品はごく僅かなのである。

 期待された多くの作品が僅か数ヶ月で屍となる。

『スマホゲー』とはそういう世界だった。


 まったく先が見えなかった。

 途中で終わるかもしれないという不安がそこにはあった。


 それでも小生がプレイし続けたのは、今まで培ってきた『信頼と実績』があったからだろう。このまま終わるはずが無い、という妄信に似た確信があった。


 その結末がどうなったのか、という話は以前に書いたとおりである。

 ただ平坦な道ではなかった、という事実ははっきりと記しておこう。


 ちなみに小生が覚えている限りでは、他にも


『メンテの後にメンテ事件』

『英霊増殖事件』

『イベントの度にアクセス過多事件』


 などがあり、多少のトラブルはゲラゲラ笑う『FGOプレイヤー』を生み出したのである。現在では何かトラブルが起きても『FGOだし』という魔法の言葉で納得できるようになってしまったとさ。


 これも違う意味の『信頼と実績』なのである。


<序章編 完>

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