* * * * * *
無脳症の、子供が昨日死んで、しまった。誰の子供だった、のだろう。まだ生きていた、から華子が連れて来た。反射で、モノに吸啜し或いは笑って、いるように思えた。世話をしていたトリソミー13、18、21、の子供たちは、みんな泣いて、しまった。
元はそういう集まりだったろ?
居場所の無い子供のための。
だから拾った命を生きるんだ。
埋められる事を祈って墓穴を掘った。
見送られる事を祈って墓標を立てた。
他人の気持ちが分からないと思う。共感性を欠いていると思う。映画を見て小説を読んで泣いた事がない。成長を拒んでいる。噛み合わないミルクパズルのピース、完成しない空虚な図柄。
(世界は文字だけで出来ていた)
白昼夢は世界の裏側を垣間見せ書物の国は君たちの住まう現実世界から観測される物語は脳内において動的に生成される現象に過ぎず言葉とは内容とはあくまでその内部における神経伝達物質として作用するのみである、各キャラクターは部品であり死体であり一・二一ジゴワットより小さな電圧は脳内でスパークしその魂を得る。あるいは
(
子供たちは笹を
心優しい人間は資源であり枯渇するまで食い尽されてばかりさ。消費されるカーストにある男たちは優しければ優しいほど損ばかり。
(と、
正しい神の言葉を競って争い君だけの世界を作ろう。二千年前から続くゲームに参加する、内なるジハードとプロテスタンティズム。石油と資源のゲーム。金銭のゲームと信仰のゲーム。
(僕が僕に流れる輸血された血液を垂れ流す事は
アリがキノコに脳を寄生されて盲目に彷徨わされている。蛾がアシナガバチの巣に卵を産みつける。芋虫が這う。
だったら殺すか、犯す・侵す・冒すしかないだろう?
言葉は君の血管を流れます。音は振動で文字は
だから、君が血を飲めば良い。未熟な果物にレタスやキュウリなんかを混ぜた簡単なサラダが出来ました。セミとかの幼虫や蛹、コオロギをさっと揚げたものを添えて。
消費行動。栄養価の吸収、排泄。僕らは
子供はいつもお腹が空いているので餌を食らいます。沖縄が日本になって北ベトナムの攻勢にラインバッカー作戦が発動されても、僕らにはあまり関係の無い話であり。
有栖は、
“部屋の中に 太陽の描かれる
蝶の朝は紙の下に
僕が起きるなり 踊り始める
部屋の鏡を見るたびに
子供は死に その
内なる女は 子供に耳を貸さない
夢を見過ぎた 想像しすぎた
いつかその日が来るのだろうと
僕に愛を教える人の事を
どこに居るの?
何をしているの?
もう愛してくれているの?
僕の愛するであろう 誰でもない者よ
窓の傍にツバメを見る
秋の風が吹いて僕を呼ぶ
雪の下に 雨の下に 虹の下に
夢を見過ぎた 想像しすぎた
いつかその日が来るのだろうと
僕に愛を教える人の事を
どこに居るの?
何をしているの?
もう愛してくれているの?
僕の愛するであろう 誰でもない者よ”
乱雑な情報群が不可逆に進行している。無意味な羅列はバラバラになって
死体遊びはそろそろ終わりにしよう。これからは物語を産む時代。姉の腹に妊娠線が再有している(帝王切開の痕にも見える)。僕らは父親が多すぎて誰の種だか分からない。だけどこれを産むのが僕だってことは何よりも確かではあるのだ。だって
子を遺せない遺伝子がその類似・相似形を求め保護するならばそれは女王を頂点とする真社会性や群体のコロニーを為すのであり、子を産めない君たち読者は、解釈者は、消費者は、【これは私・僕・俺の事を(分かって)
僕らの文学は死体です。
お姉ちゃん、妊娠したの?
有栖が訊いた。
きっとジルベールの子だよ、絶対にそう。
有栖が無邪気に言った。
そうかしら。あの人、精液が薄いのよ。
彩芽はそれだけ言うと有栖の供したパパイヤと苦いレタスのサラダと、笹麦のパンに手を付けた。
きっとそうだよ! ふたり、結婚しちゃえばいいのに!
有栖は心の底からそう思った。
名前を付ければ愛せる気がするわ。
彩芽は凹んだお腹を撫ぜながら呟いた。
「それなら――アポロが良い。お姉ちゃん知らない?
<subitement>
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