結界師

「結!滅!」


「結界師、懐かしいね~」


「実は単行本を集めていた最後の漫画ですよ」


「35巻も続いたんだよね」


「ネットで評判を読むとねぇ、芳しくない感想も多いんだわ」


「そりゃまたどうして」


「やっぱ終わり方がさ、主人公ほぼ空気だったし。少年漫画的に許せなかったんじゃない?」


「ああ、結界師って結局抗えないほどの大きな力には抗えないって終わり方だったからね」


「馬鹿猫はどう思ったの?」


「私は神様絶対主義だからあの終わり方に満足してるよ。むしろ神殺しをする作品の方が許せないからね」


「そう言えば評判の中に打ち切り説を出す人もいるみたいだね」


「35巻も続いて綺麗に風呂敷たたんでいるのに打ち切りとかもうね、言葉が見つかりませんわ」


「どうして打ち切りだって思ったんだろう?」


「どうも明かされなかった、投げっぱなしの伏線が回収されずに物語が終わったからそう思ったみたいよ。そんなん長い物語にはありがちだっつーの。大体、長く続いて打ち切られたって自分の中ではシャーマンキングしか知らないよ。他にもあるのかなぁ?そのシャーマンキングも後で書き下ろしで完結したしね。そうそう長く続いた作品で打ち切りはないよ」


「まぁネットの評判なんて個人の感想だから」


「それ言っちゃうとおしまいなんだけどね」


「ところで、結界師の魅力って何だと思う?」


「基本的に直接攻撃じゃない方法で戦う妖怪退治モノってところかな。新鮮だったねぇ」


「最終的に攻撃のバリエーションも増えるんだけど、結界師ってその能力を活かしてうまく物語を広げていったよね」


「黒芒楼編まではこのまま妖怪のボスを倒しながら、最終的には日本を滅ぼそうとする妖怪の大ボスを倒す展開かなって思ってたよね」


「あの頃はみんなうしとらみたいな展開を想像してたと思う。そうしたら話はどんどん裏会にシフトしていって……怖いのは妖怪よりも異能者って流れに」


「パターンとしてそれはありって感じだけど、そこに結界師ならではの土地の力を巡る攻防がうまく合わさって面白かったよ」


「多分結界師って最初からしっかりした構想があって作られたものじゃなくて、描きながら先の展開を考えていって作っていったタイプじゃないかと思うんだ」


「だから伏線ぽく語られた台詞が意味が通じなくなったり、意味ありげに退場したキャラがその後音沙汰が無かったりする。でも読んでいるとそこまで気にはならないんだよね」


「しっかり伏線を練って計算された話もあって当然だけど、描きながら先を考える作者も多いと思うよ。人気がなくなった時に臨機応変に物語の方向性を修正出来るしね」


「結界師は主人公無双に一瞬なりかけて、でもそうはならなかった。そこがこの作品の長所であり短所だったのかなって思う。普通の少年漫画の展開じゃないよ」


「裏会のボスの能力もえげつなかったからねぇ。相手の精神を乗っ取るって能力は別にこの作品以外でもあるんだけど、その描写ではこの作品が自分が今まで読んだ事のある作品の中で一番怖かった」


「ラストがすごく切ないんだけど、そこを受け入れられるかどうかでこの作品の評価も変わってくるんだと思う」


「ハッピーエンドが好きな人には受け入れ辛いだろうね」


「この展開はやっぱりサンデーだったから許されたんだろうね。ジャンプ漫画好きの人には不評だったんじゃないかなぁ」


「ジャンプだったら最終回の展開の後にハッピーエンドに持っていくために後1エピソード作りそうだよ」


「きっとそう言う展開がなかったからこれは打ち切りだって言っていたのかもね」


「個人的には世界の理を崩してまでハッピーエンドに強引に持っていく話は好きじゃないので、結界師があの終わり方をしたのは良かったと思うな」


「ただ、展開から言うと少年漫画らしい終わり方ではなかったかも。ヤング誌や大人向け漫画ぽい終わり方だったかもね」


 と言う訳で今回取り上げたのは結界師です。

 かつて少年サンデーで連載されていた妖怪退治モノの漫画です。

 その人気からアニメになったのですが、放送時間帯の失敗とアニメの演出の微妙さでアニメの方は余り人気にはなりませんでした。(※個人の感想です)


 だって、アニメ、野球放送の度に潰されて7,8月はほぼ放送されてなかったんですよ。毎週欠ける事なく放送出来ていたらもっと人気も出たと思うんだけど……。黒芒楼編までだったらまだ王道的展開の時期だったし。うーん、惜しかった。


 この作品、戦いが激化していく内に物語が妖怪退治モノじゃなくなっていきます。異能者の組織である裏会が戦いのメインになって、そこの内ゲバに付き合わされる事になるんです。それはこの物語が土地を守る事を主軸にしていたからでしょう。


 そう、この物語は敵を倒す物語ではなく、自分の担当する土地を守る戦いなんです。土地に力が宿る、この設定は斬新でしたねぇ。


 守る戦いだから攻撃も手から火が出たり殴りつけたりとそんな今までの物語にありがちな方法ではありません。最初に座標を指定して結界で相手を捕縛、その後その結界を消滅させると言う少し手間のかかる方法です。敵の方が強いと結界は壊されるとかして毎回緊迫感に満ちたバトルが繰り広げられていました。


 勿論妖怪とかを倒すのにその方法しかない訳じゃなく、裏会所属の異能者達はそれぞれ独自の多彩な攻撃方法を持っていました。ちなみに裏会は全国の異能者全員が所属している団体って設定で主人公も登録されています。


 主人公が守る烏森と言う土地はその土地に妖怪が入ると力が得られる特殊な土地です。実はそのからくりも後で明かされるのですが、実に悲しい過去がありました。


 特別な力を持つ土地にはその土地の主がいて物語の中盤からはその土地の主、土地神を巡り争う事になります。何故なら土地神の力を人間が奪う事が出来るからなんです。作中に現れる土地神も色んな存在がいて、神様に近かったり化物だったり……それらを裏会幹部がどうにかしようとするんですよ。そこで繰り広げられるドラマ、裏会に蠢く怪しい陰謀。


 実は主人公の兄が裏会幹部なんですが、裏会関係は基本兄貴が担当していましたねぇ。裏がありそうな思わせぶりの兄貴でしたが、結局そんな裏はなかったのが良かったのか物足りなかったのか。私は良かったですけどね。


 書いていくと全ての物語を書き出しそうなので物語展開の話はこの辺にします。


 テーマとして結界師は強過ぎる存在には抗えないと言うのがある気がします。結果的にそうなってしまっただけなのかも知れませんけど。

 大抵の少年漫画のバトル物の最後の展開って主人公と倒すべき敵だけが突出した存在になっている事が多いですよね。

 この話では最後まで主人公には敵わない存在がおります。ひとつは規格外の神様でもうひとつは自分の母親です。ある意味、努力は才能に敵わない物語なんです。

 でも、それを受け入れるしかない、世界はこれからも続いていく、そんな物語でした。

 なので、王道の物語が好きな人にはきつい話なのであんまりお勧め出来ません。少し王道とは違った物語を楽しみたい人にはおすすめです。

 

 あ、だから自分的には面白かったんだな。納得。

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